このほど、中國上海の科學研究チームが、世界初のタンパク質を使うバイオ技術で超高密度半導體メモリ――「蠶糸ハードディスク」の開発に成功した。チームは米國のニューヨーク州立大學ストーニーブルック校とテキサス大學オースティン校と共同で、世界で初めて蠶糸の蛋白質に基づいた大容量生物ストレージ技術を実現。蠶糸を使って開発されたハードディスクはデジタルデータの保存の他、血液サンプルやDNAやワクチンなども保存できる。生物體に埋めることさえもできる。
8月10日、當該研究のメイン研究員の一人で、中國科學院上海微系統與信息技術研究所、及び上海微研究所2020前線実験室の主任である陶虎が、この蠶糸ハードディスクについて説明した。これによると、蠶糸ハードディスクはデジタルデータと生體情報を同時に記録できるだけでなく、生きた生物體の中に長時間埋めることもできる。そして特別な作り方によって生分解の時間をコントロールできる。さらには、宇宙空間などの極端な環境の中でも正常に機能する。陶虎主任は、「蠶糸ハードディスクは強磁場と強輻射場の影響を受けません。蠶糸ハードディスクを電子レンジの中に入れて30分加熱しても中のデータは破損しません」と述べた。現在蠶糸ハードディスクの容量は1平方インチあたり64GBとなっている。
この技術についての論文は、8月11日に世界的に有名な學術雑誌『ネイチャー ナノテクノロジー』(Nature Nanotechnology)に掲載された。研究チームはこの技術を使って畫像や音聲などのファイルの精確な保存と読み出しを検証した。
陶虎主任の話によると、蠶糸で作ったハードディスクはナノメートル級の近赤外線フォトリソグラフィシステムを使ってデータを保存し、同じシステムでデータを読み出す。赤外線の強度を変えることで蠶糸の蛋白質の形を調整してデータを消す。その書き込み原理はCDやDVDと似ている。
蠶糸タンパクメモリは高容量で信頼性の高い新型のメモリ技術として、一般的な半導體素子メモリを使ったドライブのようにデジタルデータを記録できるだけでなく、生物情報保存のための巨大なプラットフォームを提供することで、生物情報を収集し、人體のDNAと血液サンプルを保存できる。また、このメモリは予め設定されたタイミングで廃棄されるため、守秘にも使用可能だ。將來は蠶糸ハードディスクの記憶容量と読み書き速度を上げることで、次世代の高容量で信頼性の高い情報記録技術になることが期待されている。