人気漫畫が原作のアニメーション映畫「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が、公開から73日間で324億円に達し、平成13年に公開された「千と千尋の神隠し」の316億円を抜いて、國內で上映された映畫の歴代1位になりました。
人気漫畫「鬼滅の刃」を原作にした「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、大正時代の日本を舞臺に主人公の少年が敵の鬼たちと戦いを繰り広げる物語で、去年放送されたテレビアニメの続きが描かれています。
映畫を配給する東寶などによりますと、ことし10月16日の公開から27日までの73日間の観客動員數は2404萬人で、興行収入は324億7889萬円に達したということです。
この結果、興行収入は、平成13年に公開された宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」の316億8000萬円を抜いて、國內で上映された映畫の歴代1位になりました。
興行通信社がまとめた國內で上映された映畫の興行収入の歴代トップ10は、以下のとおりです。
1位 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 324億円(2020年10月16日公開)
2位 千と千尋の神隠し 316億円(2001年7月20日公開)
3位 タイタニック 262億円(1997年12月20日公開)
4位 アナと雪の女王 255億円(2014年3月14日公開)
5位 君の名は。250億円(2016年8月26日公開)
6位 ハリー・ポッターと賢者の石 203億円(2001年12月1日公開)
7位 もののけ姫 201億円(1997年7月12日公開)
8位 ハウルの動く城 196億円(2004年11月20日公開)
9位 踴る大捜査線THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!173億円(2003年7月19日公開)
10位 ハリー・ポッターと秘密の部屋 173億円(2002年11月23日公開)
(今月27日現在)
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のヒットについて、アニメのビジネスに詳しい研究者の數土直志さんは「正義が貫かれるという前向きな物語が、コロナ禍で沈んだ気持ちのなか非常に受け入れやすかったのではないか」と分析しています。
數土さんは、これまでアニメ映畫のヒットは、スタジオジブリや新海誠監督の作品など作家性を打ち出したオリジナルの大作か、「ドラえもん」や「名探偵コナン」など、長年テレビシリーズが続き毎年1本の上映でファンを増やしてきた作品の2つのパターンがあったとしています。
しかし、「鬼滅の刃」はどちらのパターンにも當てはまらない特殊なケースだとしたうえで「映畫では原作のよさをきちんと追いつつ、さらにおもしろさを引き出すことに成功している」と評価し、「映畫の話題作を見に行く人たちが、アニメ映畫にも偏見なく足を向ける時代になっている」と今回のヒットを分析しました。
今回のヒットがアニメ界に與えた影響については「最近は『ガンダム』や『エヴァンゲリオン』などの強いアニメコンテンツが生まれにくくなったと言われるが、今の子どもたちは『鬼滅の刃』が自分たちの作品だという気持ちが非常に強いと思う。今後數十年続いていく新たな作品がまだ生まれるという気持ちにさせてくれたのは大きい」とその功績を語りました。
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のヒットについて、映畫の配給を行っている東寶の市川南常務取締役は今月15日の會見で「予想を超える國民的ヒット」としたうえで、その理由について2つの要因をあげています。
1つは『作品の持つ力』で「本質的には何よりも作品のすばらしさだと思う。アニメーションとしてクオリティーの高さがあり、物語をはじめ、迫力のバトル、仲間との友情、最強の敵、それに加えて大正時代の日本という舞臺、妹や家族への思い、敵である鬼の內面のドラマ、そういうところが日本人の琴線に觸れるテーマ性があって、國民的なヒットにつながった」と話しました。
もう1つは映畫が公開された際の狀況で、新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの人が映畫の公開前に原作となった漫畫や映畫の前段の物語を描いたテレビアニメーションを自宅で楽しんでいたと指摘しています。
そのうえで「漫畫の読者とアニメ視聴者がそもそも激増していた。また、ハリウッド映畫の公開延期を受けて、映畫館のスクリーン數と上映回數を最大に確保できた。そういった中で映畫を公開できたことが、大ヒットの理由だと思っています」と説明しました。
そして、次回作について問われた市川常務取締役は「『鬼滅の刃』の劇場版に関しては、ぜひ次回作もやっていただきたいと思っています。また劇場で見たいという聲が高まると思うので、ファンの皆様を代表して、映畫の配給の立場から、劇場版をやっていただきたいと強くお願いしていきたい」と期待を寄せていました。
興行収入が歴代1位となった「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」、鬼滅の刃のファンは富山市にある人口およそ200人の集落「滅鬼地區」にも訪れ、滅鬼の文字が入ったバス停などを寫真に収める姿が見られました。
原作と関連がありそうなものを見つける動きは各地であり専門家は「関心の高いものと関連がありそうなものを見つけ出そうとする、人の心の動きの現れ」だと説明しています。
人口およそ200人の富山市の滅鬼集落では、バス停や集會所、交差點の標識などには「滅鬼」の文字がならびます。
滅鬼地區の電器店に勤める男性に聞くと、ことし10月に女性のユーチューバーに紹介されて以來、滅鬼の文字を寫真を撮る人の姿がよく見られるようになったということです。
地區の名前の由來を調べてみると、「當※地往古は樹木鬱蒼として生へ繁り晝尚暗き所なりしかば狐狸ならびに山賊の類此處に住して世人に危害を加えたるが一と歳ある勇猛の士この土を過ぎ退治せしにより妖鬼滅亡せしとの意より斯く名づけたるなりと」と書かれています。(越中婦負郡志より「當」は舊字)
晝でも暗くなるほど木々が生い茂って山賊などが住み著き悪事を働いていたが、通りすがりの勇敢な武士が退治したことから「滅鬼」と名付けられたということです。
原作と同じ、「鬼退治」の話にもつながっています。
鬼滅の刃に関しては、「主人公が刀で斬った巖に似ている」という巖が各地で見つかったり、原作に出てくるシーンと似た旅館も話題になったりしています。
こうした狀況について社會心理學が専門の東洋大學の戸梶亜紀彥教授は「「選択的注意」とも言いますが、人間の脳は多くの情報の中から自分が関心を持っている対象を選んで注意を向ける働きがあります」
「鬼滅の刃のファンが作品にとても夢中になっていて、少しでも関連性がありそうなものを見つけ出そうとしている、そうした心の動きの現れだと思います」と説明しています。
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映畫「鬼滅の刃」の収入が日本で上映した映畫の中で1番になる
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