素材企業で、植物から抽出した天然色素で染める技術が広がっている。人気が継続する色物を、自然に優しいイメージで表現できるとして引き合いも多い。一方で、綿やウールを中心に、原料本來の色を生かした無染色の打ち出しも活発になっている。
前冬から「ハーブファブリック」の訴求を強める(東播染工)
植物で染めるというと、草木染がイメージされることが多い。植物の花や果実、根などを煮出した液に生地を浸して染め、水に溶かした金屬などとの化學反応で色を固著・発色させる方法だ。1色を何十種類もで構成する天然色素は、奧行きのある色を放ち、古くから親しまれてきた。しかし、手間がかかり、同じ色を繰り返し出すことが難しい上、色落ちしやすい。このため現在、日本に流通する商品の大半は化學染料が使われている。
課題乗り越え開発これらの弱點を改善した染色方法が、ここ數年で相次ぎ登場している。天然色素に少量の化學染料を混ぜたり、加工工程を工夫したりと技術開発で課題を乗り越えた。新內外綿の「ボタニカルダイ」、小松マテーレの「オニベジ」が代表的で、アパレルでの採用が進んでいる。オニベジは、廃棄されるタマネギの皮の成分をベースに使い、天然色素では難しかった合繊の染色を可能にした。
昨年は、木曽川染絨が草木に化學染料を混ぜて綿・ポリエステルを染める「ボタデジ」を新たに開発。ポリエステルに殘った色が発色をカバーし、色の変化も楽しめる。天然染料で綿100%を染める「ボタニックス」も揃え、ピュアな物を求める先にはボタニックスと使い分ける。東播染工は「ハーブファブリック」の本格販売に乗り出した。エンジュやザクロ、ログウッドといった植物から抽出した染料に、GOTS認証の染料を組みあわせ、天然の素樸で美しい色調を維持できるようにした。
浸染だけでなく、プリントも出てきた。デザインハウス風は昨年から「ローウッド・プリント」の販売を開始。地元京都の特産品である北山杉の間伐材から染料を抽出し、京都の職人が手捺染する。木の溫かみを感じるベージュや茶の色合いで、グラデーションのような濃淡も可能。染め出し後の木材チップは燃料用ペレットなどに再利用し、自然に優しく無駄のない生産サイクルを追求している。
茶綿と緑綿を使い分け、わた本來の色で柄を描いた(カゲヤマ)
本來の色を生かす明るく華やかな色の一方で、無染色のナチュラルな色が急浮上している。22~23年秋冬に向け、素材企業や商社で拡充する動きが目立つ。茶色や緑に色づく綿のわたや有色羊の毛といった原料本來の色を生かし、染色工程を省くことで、環境負荷を軽減できる。原料本來のふくらみや柔らかさが発揮できる利點もある。カゲヤマは、オーガニックの茶綿や緑綿を使い分け、染めずにチェックやストライプ柄の織物を作った。無染色ウールは、尾州産地が先行し、コンバーターやニッターでも提案が増えている。小原屋繊維はブルガリア地方に生息する羊のブルガリアンハイランドウールによる無染色織物で、生成りと茶の糸を組み合わせた3色を仕掛ける。歐州のテキスタイルメーカーでも開発が盛んで、輸入代理店からは「カラフルと無染色のナチュラルカラーとで二極化している」指摘もある。
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