フィリピンのドゥテルテ大統領だいとうりょうは、18日にちから4日間の日程にっていで就任しゅうにん後ご初はじめて中國ちゅうごくを訪問ほうもんし、習近平國家こっか主席しゅせきや李り克強首相しゅしょうとの首脳しゅのう會談かいだんに臨のぞむことにしていて、両國りょうこくの間あいだで対立たいりつが続つづく南みなみシナ海かいの問題もんだいで大統領だいとうりょうがどういった対応たいおうを取とるのかが焦點しょうてんとなります。
フィリピンのドゥテルテ大統領だいとうりょうが中國ちゅうごくを訪おとずれるのは就任しゅうにん後ご初はじめてで、18日にちから4日間の日程にっていで習近平國家こっか主席しゅせきや李り克強首相しゅしょうなどと個別こべつに會談かいだんする予定よていです。
両國りょうこくの首脳しゅのうによる會談かいだんは、南みなみシナ海かいの問題もんだいをめぐってフィリピンが申もうし立たてた國際こくさい的てきな仲裁ちゅうさい裁判さいばんでことし7月しちがつに中國ちゅうごくの主張しゅちょうが否定ひていされて以降いこう、初はじめてです。南みなみシナ海かいの問題もんだいについて、フィリピンは、仲裁ちゅうさい裁判さいばんの判斷はんだんを踏ふまえることが2國間かん協議きょうぎを始はじめるための原則げんそくだとしているのに対たいして、中國ちゅうごく側がわは判斷はんだんを前提ぜんていにした協議きょうぎには応おうじない立場たちばを取とっています。
一方いっぽう、ドゥテルテ大統領だいとうりょうは、中國ちゅうごくとの関係かんけいを改善かいぜんして経済けいざい支援しえんを取とりつけたい考かんがえで、中國ちゅうごく側がわも鉄道てつどう建設けんせつといったインフラ整備せいびなどへの支援しえんについて前向まえむきな姿勢しせいを示しめしています。
ドゥテルテ大統領だいとうりょうは、16日にちの記者きしゃ會見かいけんで、南みなみシナ海かいの問題もんだいについて、首脳しゅのう會談かいだんでは譲歩じょうほしない考かんがえを強調きょうちょうする一方いっぽう、中國ちゅうごくとの決定的けっていてきな対立たいりつは避さけたいとして、突つっ込こんだ議論ぎろんには消極しょうきょく的てきな姿勢しせいを示しめしました。今回こんかいの訪問ほうもんでは、ドゥテルテ大統領だいとうりょうが、南みなみシナ海かいの問題もんだいで実際じっさいにどのような対応たいおうを取とるのかが焦點しょうてんとなります。
対たい米べい関係かんけいでは前ぜん政権せいけんと一線いっせんを畫かくす
ドゥテルテ大統領だいとうりょうは、南みなみシナ海かいの問題もんだいをめぐって前まえの政権せいけんが同盟どうめい國こくアメリカと軍事ぐんじ面めんでの関係かんけいを強化きょうかすることで中國ちゅうごくに対抗たいこうしてきたのとは一線いっせんを畫かくす姿勢しせいを示しめしています。具體ぐたい的てきには、中國ちゅうごくとの関係かんけいを改善かいぜんしてインフラ整備せいびなどで経済けいざい支援しえんを得えたい考かんがえで、関係かんけいの構築こうちくのために南みなみシナ海かいの問題もんだいでは両國りょうこくの首脳しゅのうどうしで対話たいわをして雙方そうほうが主張しゅちょうを棚上たなあげすることも提案ていあんしています。一方いっぽう、南みなみシナ海かいの問題もんだいをめぐり前まえの政権せいけんで一枚巖いちまいいわの関係かんけいを築きずいたアメリカとの間あいだでは距離きょりを置おく姿勢しせいを強つよめています。
ドゥテルテ大統領だいとうりょうはみずからが進すすめる麻薬まやくの撲滅ぼくめつ対策たいさくをめぐり、人権じんけんの尊重そんちょうを求もとめるアメリカのオバマ大統領だいとうりょうを先月せんげつ、名指なざしで批判ひはんし、首脳しゅのう會談かいだんが中止ちゅうしとなる異例いれいの事態じたいとなりました。これ以降いこう、両國りょうこくが南みなみシナ海かいで行おこなっていた共同きょうどうの哨戒しょうかい活動かつどうに參加さんかしない意向いこうを表明ひょうめいしたり、合同ごうどうの軍事ぐんじ演習えんしゅうを打うち切きる考かんがえを示しめしたりするなど、アメリカとの軍事ぐんじ面めんでの協力きょうりょく関係かんけいを見直みなおすという発言はつげんを繰くり返かえしています。
中國ちゅうごくの狙ねらいは
中國ちゅうごく政府せいふは、ドゥテルテ大統領だいとうりょうが前まえのアキノ政権せいけんとは一線いっせんを畫かくし、アメリカと距離きょりを置おく一方いっぽう、中國ちゅうごくとの関係かんけい改善かいぜんに強つよい意欲いよくを示しめしたことから、早期そうきに訪中ほうちゅうするよう積極せっきょく的てきに働はたらきかけてきました。
ドゥテルテ大統領だいとうりょうが就任しゅうにん後ご、ASEAN=東南とうなんアジア諸國しょこく連合れんごうの域外いきがいの國くにを訪おとずれるのは初はじめてで、來週らいしゅうに予定よていされている日本にっぽん訪問ほうもんより前まえに中國ちゅうごく訪問ほうもんを実現じつげんできたことは、中國ちゅうごく外交がいこうにとって得點とくてんと言いえそうです。
中國ちゅうごく政府せいふは、ことし7月しちがつに南みなみシナ海かいをめぐる國際こくさい的てきな仲裁ちゅうさい裁判さいばんでみずからの主張しゅちょうが否定ひていされ、南みなみシナ海かいで進すすめる拠點きょてん構築こうちくに対たいして國際こくさい的てきな批判ひはんが強つよまっただけに、孤立こりつ化かを防ふせぎ、形勢けいせいを盛もり返かえすチャンスとして、ドゥテルテ大統領だいとうりょうの訪問ほうもんを利用りようしたい考かんがえです。
17日にち、國営こくえいの新華社通信しんかしゃつうしんは、ドゥテルテ大統領だいとうりょうが最近さいきん行いったインタビューで、南みなみシナ海かいの問題もんだいについて「ほかの國くにを交渉こうしょうに參加さんかさせることに興味きょうみはなく、中國ちゅうごくとだけ話はなし合あいたい」と述のべたうえで、南みなみシナ海かいの共同きょうどう開発かいはつを望のぞむ考かんがえを示しめしたと伝つたえました。また、「フィリピンは鉄道てつどうを必要ひつようとしており、中國ちゅうごくが緩ゆるやかな條件じょうけんで資金しきんを貸かしてくれるよう望のぞむ」と、中國ちゅうごくの経済けいざい支援しえんに期待きたいを示しめしたとも強調きょうちょうしています。
習近平國家こっか主席しゅせきは、ドゥテルテ大統領だいとうりょうとの首脳しゅのう會談かいだんを通つうじて、南みなみシナ海かいの問題もんだいは當事者とうじしゃどうしで解決かいけつする姿勢しせいをアピールし、仲裁ちゅうさい裁判さいばんの判斷はんだんの受うけ入いれと國際こくさい法ほうの順守じゅんしゅを迫せまるアメリカや日本にっぽんなどをけん制せいすると見みられます。さらに、ドゥテルテ大統領だいとうりょうが力ちからを入いれる麻薬まやく対策たいさくや経済けいざい分野ぶんやへの支援しえん強化きょうかを打うち出だしてフィリピンとの関係かんけい改善かいぜんを加速かそくさせ、重視じゅうしする周辺しゅうへん外交がいこうの立たて直なおしのきっかけにしたいという思惑おもわくもありそうです。
過激かげきな言動げんどうに國際こくさい社會しゃかいの批判ひはんも
過激かげきな言動げんどうで知しられるドゥテルテ大統領だいとうりょうは、ことし6月ろくがつに就任しゅうにんして以降いこう、その発言はつげんでさまざまな問題もんだいを引ひき起おこしています。
先月せんげつ5日には、みずからが進すすめる麻薬まやくの撲滅ぼくめつ対策たいさくをめぐって大勢たいせいの人ひとが警察けいさつに殺害さつがいされていることについて、人権じんけんの尊重そんちょうを求もとめるアメリカのオバマ大統領だいとうりょうを名指なざしで批判ひはんしました。そのうえで、「オバマは何様なにさまのつもりだ。フィリピンはアメリカの屬國ぞっこくではない」などと発言はつげんし、予定よていされていた首脳しゅのう會談かいだんが中止ちゅうしとなる異例いれいの事態じたいを招まねきました。これについて、ドゥテルテ大統領だいとうりょうは、「個人こじん攻撃こうげきのように受うけ止とめられたことは殘念ざんねんだ」といったんは遺憾いかんの意いを表あらわしましたが、その後ごもオバマ大統領だいとうりょうへの批判ひはんを繰くり返かえし、今月こんげつ4日の演説えんぜつでは、「地獄じごくへ落おちろ」などと激はげしくののしりました。
また、先月せんげつ30日にちには、フィリピンの麻薬まやく対策たいさくをめぐり、みずからをナチス・ドイツの総統そうとうだったヒトラーに例たとえたうえでユダヤ人じんの大量たいりょう虐殺ぎゃくさつになぞらえ、「喜よろこんで麻薬まやく中毒ちゅうどく者しゃを虐殺ぎゃくさつする」などと発言はつげんし、國際こくさい社會しゃかいからの強つよい批判ひはんを受うけ、謝罪しゃざいする事態じたいに追おい込こまれました。
國民こくみんから圧倒的あっとうてきな支持しじ
ドゥテルテ大統領だいとうりょうは、剛腕ごうわんとも評ひょうされる実行じっこう力りょくに國民こくみんから高たかい期待きたいが寄よせられ、最新さいしんの世論せろん調査ちょうさでは、「大統領だいとうりょうを信頼しんらいする」と答こたえた人ひとの割合わりあいは86%にのぼり、「信頼しんらいできない」と答こたえた人ひとはわずか3%と、圧倒的あっとうてきな支持しじを集あつめています。
こうした中なか、大統領だいとうりょうの中國ちゅうごく訪問ほうもんについて、首都しゅとマニラの人ひとたちからは、経済けいざい協力きょうりょくが進すすむことを期待きたいする一方いっぽう、領有りょうゆう権けんの問題もんだいで譲歩じょうほを迫せまられるのではないかと懸念けねんする聲こえも聞きかれました。
このうち、26歳さいの女性じょせいは「フィリピンの経済けいざい成長せいちょうにつながるのなら今回こんかいの訪問ほうもんに賛成さんせいします」と話はなし、中國ちゅうごくとの関係かんけいが改善かいぜんして経済けいざい協力きょうりょくが進すすむことに期待きたいを示しめしました。一方いっぽう、40歳さいの男性だんせいは「中國ちゅうごくの経済けいざい支援しえんには別べつの目的もくてきがあるから、関係かんけいを構築こうちくするにもバランスを取とらなければならない」と話はなし、中國ちゅうごくに経済けいざい面めんで過度かどに依存いぞんしすぎると領有りょうゆう権けんの問題もんだいで譲歩じょうほを迫せまられるのではないかと懸念けねんする聲こえも聞きかれました。