中國人にとって飲み物といえば「お茶」。お茶を入れた水筒を家から持參して通勤し、茶葉とお湯を継ぎ足していく。そんな伝統的スタイルから、コーヒーをたしなむ人が急激に増えている。街角にはコーヒーショップが次々と誕生。中國のコーヒー市場は「戦國時代」に突入している。
中國の調査會社によると、中國のコーヒー消費量は年15%増を上回る勢いだ。現在は3000億元(約4兆7413億円)とされる市場は、近い將來には1兆元(約15兆8042億円)に拡大する見込みという。中國は長引く米中経済摩擦の影響で輸出が減少しており、內需を拡大したい政府の方針にも見合っている。
中國で4000店舗以上を展開している米大手スターバックスは、江蘇省崑山市にコーヒー豆の輸出入から焙煎、物流まで手がける産業パークの建設を開始。米國以外では最大規模という。李克強首相は3月の調印式に「この戦略的な投資は、新たな産業のサプライチェーンに貢獻する」と祝辭を寄せた。
米ファストフード大手ケンタッキーフライドチキン(KFC)は2019年に中國で1億3000萬杯のコーヒーを販売した。そして今月16日、中國マクドナルド(McDonald's)の発表が中國で大きなニュースとなった。傘下のコーヒー専門ブランド「マックカフェ」に今後3年間で25億元(約395億円)を投資し、中國全土に4000店舗以上を増やす方針を打ち上げた。既存のマック店內にカフェ専用ブースを設置し、専任バリスタが手作りコーヒーを提供するという。同社の張家茵(Zhang Jiaying)最高経営責任者(CEO)は「中國のコーヒー市場はいきおいある発展を遂げ、消費者はよりコーヒーを理解し好むようになった。設備のアップグレード、人員育成などに力を入れていく」と宣言した。
中國企業では新興コーヒーチェーン瑞幸珈琲が2017年の創業から急成長し、あっという間にスターバックスの店舗數を上回った。スタバより低価格で、2杯注文すると1杯の無料クーポンをつけるサービスは「仲間3人で注文すると1杯がタダ」と人気となった。スマホアプリを活用したサービスも受け入れられた。今年4月には不正會計問題が発覚し、米ナスダックから上場廃止の通告を受けて一時は経営危機までささやかれたが、それでも業績を持ち直した。
コンサルタント會社ユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)によると、2019年の中國人1人あたりのコーヒー消費はわずか5.4杯。米國の341杯、西歐諸國の591杯に比べると圧倒的に少ない。まだまだいくらでも「飲める」市場というわけだ。外資系、中國系企業が競い合いながらコーヒー市場を拡大する流れは今後も続きそうだ。