今年1月、孫の帰りを待つ山村に住む老人が「ペッパピッグって何?」という素樸な疑問を投げかける動畫が瞬く間にネット上の話題をさらい、3月には、毎日上海の街中でゴミ拾いをするホームレスの沈巍さんがネット上で注目を集めた。そして、9月には、1度聞くと耳から離れない曲「野狼disco」が數多くのショート動畫のBGMに使われる「神曲」となり、年末には、田舎のスローライフを紹介する動畫を投稿して人気を博している「90後(1990年代生まれ)」のビデオブロガー・李子柒さんが再び大きな話題となった。
かつて「ネット有名人」といえば、「美しくて若い女性」というのが誰もが抱くイメージだったが、今年、「ネット有名人」として多くの人の記憶に殘っているのは、素樸で、庶民的な人が多く、まさか注目を集めることになるとは思わなかったというケースすらあった。
「自分は平凡な人生をずっと送るのだろう」と思っていた上海で26年間ホームレスをしている沈巍さんは、ネット上で注目の的となった後も、「10日もすれば人気もおさまるだろう」と思っていた。しかし、結果的には人気の度合いは確かにやや弱まったものの、衰えることは無く、ずっと続いているという。
今年7月、上海は「強制ゴミ分別時代」に突入した。あるネットユーザーは、「以前は上海の人が皆山に登り、水辺で遊んでいた時に、沈巍さんがゴミ分別をしてくれていたが、今は沈巍さんがあちこちを旅して、上海の人がみんなでゴミ分別をするようになった」とユーモラスなコメントを寄せている。
沈巍さん
そして、沈巍さんの生活は、「接待」を受けたり、カメラを向けられる生活へと一変。ある報道によると、今年11月、陝西省西安市を訪問した沈巍さんは、ファンらが計畫した送別會に出席したところ、會場が大混雑するほど大盛況となった。
ライブコマースで口紅を売りまくる李佳琦さんは、ライブ配信で音楽プロデューサーの高暁松に口紅を塗ることになるとは想像もしていなかっただろう。
李佳琦さんのライブ配信のスクリーンショット
もともと宅配員や溶接の仕事をしていた中國東北地方に住む田野さんも、自分が「老四」というハンドルネームでショートビデオブロガーとなり、たくさんのネットユーザーにその作品を見てもらい、「いいね!」を寄せてもらえるようになるとは想像もしていなかっただろう。「老四」は今、個人メディアを通して「東北文芸の復興に一役買っている」と稱されるようになっている。
昨年、DIYが得意なことでネットユーザーの間で大きな話題となった「手工耿」こと耿帥さんも、今年中國中央テレビ局(CCTV)の番組に出演することになるとは夢にも思っていなかっただろう。
これら「庶民的なネット有名人」たちは、ネットで話題になる前は多くの人と同じく普通の人だった。
農村で育った李子柒さんは2012年、祖母が病気になったのをきっかけに、全てを捨てて実家に戻った。そして、生計を立てるために、ショッピングサイト・淘寶にショップを開設し、商品がもっと売れるようにとショート動畫も活用した。
李子柒さんの動畫のスクリーンショット
2013年、まだ「ネット有名人」にはなっていなかった耿帥さんは微博(ウェイボー)に、「自分は何の役にも立っていない気がしてとても悲しい。本當に何の役にも立っていないんだけど」とネガティブな気持ちを綴り、「もうすぐ30歳になるけど、まだ人生を変えるチャンスはあるのかなぁ?」と自分に問いかけていた。
當時、溶接の仕事をしていた耿帥さんが他の人から常に聞かれることと言えば、「この暖房の取り付けはいつ終わるの?」だった。
彼と芸能界の唯一のつながりはと言えば、講談家の単田芳さんの家で作業をしたことぐらいで、その時には、微博に「壁に飾られている字の意味がほとんど分からなかった」と綴っている。
耿帥さんの微博のスクリーンショット
2016年、李佳琦さんは店員の仕事をしており、「あの時は普通の人と同じで毎朝9時から夕方5時まで働いていた。店ではお客さんに自分がいいと思う商品を紹介していた」と振り返る。
2017年、まだ「ネット有名人」にはなっていなかった田野さんは中國東北地方にある実家に戻ってもうすぐ10年になろうとしていた。それでも、宅配の仕事をして、毎日平凡な生活を送っていた。
冬になると気溫が下がり、同僚らは手が冷えないようにと、耳あてと耳の間に攜帯を挾んで配達先に電話していた。そして、そうしたシーンはその後、田野さんの微博アカウント「老四的快楽生活」の「日常」としてショート動畫に登場するようになった。「耳あてで攜帯を挾むと、問題なくしゃべることもできる。それとしょっちゅう鼻水を吸う音が聞こえているのは、とても寒いから」と田野さん。
同じく東北地方出身の董寶石さんは、実家を離れて、希望を抱いて都市に引っ越して暮らし始めた。
引っ越してすぐに、董寶石さんは、配車アプリ・uberを使うタクシードライバーを始めた。しかし、3日目には、道をよく知らなかったため、客に10元(1元は約15.64円)をお詫びに払う羽目になったほど。「道を全然覚えられないので、ドライバーは向いていないと思う。社長にも『お前はいい奴だけど、能力がない』と言われた」と振り返る。
しかし、董寶石さんが、それほど深く考えずにわずか2日で作ってしまったラップの曲「野狼disco」が人生を大きく変えることになろうとは、本人も全く予想していなかった。この曲が大ヒットし、董寶石さんはそのアルバムのタイトルから取られた「老舅」というニックネームで広く知られるようになった。
「野狼disco」のMV。
ラップコンテスト「Rap of China」。動畫のスクリーンショット
今年のラップコンテスト「中國新説唱(Rap of China)」で、彼は予選を順當に勝ち抜き、60秒の映像を撮影する前の夜、北京のライブで「野狼disco」を披露したところ、「龍を描く」のフレーズに會場全體で大合唱が起こり、董寶石さんは聲を張り上げすぎて喉がかすれてしまったという。
董寶石さんは、「僕は成功を手にした。でも、成功したのは、『野狼disco』のおかげというよりも、ずっとライブをしてきたから」とカメラの前で語る。
「老舅」と呼ばれる董寶石さんと同じく、田野さんもショート動畫で人気の火が付き、「老四」と呼ばれるようになった。
今年、田野さんは日々の暮らしを観察することで、「東北の世界」を描いた動畫の製作を始めた。彼は一人で、男性も女性も演じ、數えてみると、5‐6役はこなしている。例えば、お酒の席で一気飲みをする兄、高校受験に気をもむ母親、噂話好きの近所の人、能力のない娘婿、娘びいきがすごい妻の母、一切を悟っているかのような気のいい妻の父などだ。
「老四」の動畫のスクリーンショット
今年、李佳琦さんは、社會現象を巻き起こすライブ配信パーソナリティーとなった。そして、その口癖である「oh,my god!」、「買って、買って、買って」を、多くの人が口ずさむようになった。
そして、李佳琦さんのライブ配信に、多くの人気芸能人が出演するようにさえなった。
李佳琦さんのライブ配信のスクリーンショット
李子柒さんは海外でも大人気のビデオブロガーとなっている。
動畫共有サービス・YouTubeで、彼女のチャンネルの登録者數は780萬人を超え、その動畫のクリック回數は1千萬回に達している。多くの外國人は動畫を通して、魅力ある中國の伝統文化を知り、中國人、そして中國が好きになっている。
李子柒さんの動畫のスクリーンショット
今年、耿帥さんは動畫を通して、約40件のDIY「発明」を紹介した。
例えば、一定時間を走らないと檻が開かない強制ランニングマシン、料理の香りはかげるものの食べることができない機械、物理的に笑顔を作る笑顔補助器などだ。
現在、「役に立たない」から、DIY名人となった耿帥さんを、ネットユーザーらは、「無用エジソン」、俳優の樊少皇に似ていることから「保定の樊少皇(ルイス・ファン)」、そして彼の作品を「無用良品」と呼んでいる。
ランニングマシンをDIYした耿帥さんの動畫のスクリーンショット
「笑顔補助器」をDIYした耿帥さんの動畫のスクリーンショット
今年の夏、耿帥さんがCCTVのインタビューに応じてからというもの、彼の微博をたちまち多くのネットユーザーがアクセスするようになっている。「耿さんが作り出すものは全て無用な廃品」というトピックに、あるネットユーザーは、「こんな無用な廃品の數々が私たちにたくさんの楽しみを與えくれているのだから、あなたは本當に有用だ。ありがとう」と感謝の言葉を寄せている。
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