ここ最近「タロイモミルク」というドリンクが「ポストタピオカ」として注目を浴びている。これまでにもタピオカの次のトレンドとして、「チーズティー」などの新しいドリンクが話題に上ったが、求められているのはタピオカというトッピングの代わりなのだろうか。ポストタピオカの最新動向を探った。
女子大生に話題の「タロイモミルク」とは?
2018年夏頃から盛り上がりを見せているタピオカドリンクのブーム。1年以上たった今でも勢いは衰えることがなく、都心のターミナル駅付近には複數のブランドのタピオカドリンク店が軒を連ねる光景も珍しくない。
そんななか、市場には「ポストタピオカ」と呼ばれるドリンクが登場している。最近話題なのが「タロイモミルク」だ。サトイモの一種であるタロイモをペースト狀にして牛乳とブレンドした飲み物で、濃厚かつコクのある味わいが特徴。19年10月に東京・青山にオープンした「Milksha Aoyama(ミルクシャ アオヤマ)」(運営:Milkshop Japan/東京・目黒)で提供を始めたところ、次のトレンドになり得るドリンクとして雑誌やテレビで大々的に取り上げられるようになった。近くに大學があることから若い女性の來店も多く、特に平日の14~18時が混み合うという。
ミルクシャは臺灣で227店舗を展開し、世界各國にも進出している。タロイモミルクも臺灣で人気のあるドリンクだ。同店のツァイ・ミンツァン代表は「タピオカドリンクが定著した今なら、タロイモドリンクも受け入れられるのではないか」と日本進出の理由を語る。
最もオーダー數が多いのはやはりタピオカを使ったドリンクだが、タロイモミルクは2番目に人気だという。テレビで紹介されたこともあり、味を知るために訪れる人も少なくないようだ。
日本茶を使ったドリンクの人気も加速
「ポストタピオカとして、特にこれといえるドリンクにシフトしているようには感じない」と話すのは、外食に詳しいホットペッパーグルメ外食総研上席研究員の有木真理氏。だが有木氏は「2つの傾向がある」と指摘する。
1つはタピオカ同様、臺灣発祥のドリンクが増えていること。例えば、「チーズティー」。冷たい中國茶やミルクティーの上にフォーム狀のチーズクリームを載せたドリンクで、19年6月に東京・原宿にオープンした専門店「machi machi(マチマチ)」は今も連日多くの人が訪れる(関連記事「狙うはポスト・タピオカ 臺灣発の新ドリンク『チーズティー』」)。
もう1つはミルク系ドリンクに対する注目だ。タロイモミルクには茶が一切使われておらず、「店名にもある通り、ミルクにこだわったドリンクであることが売り」(ミルクシャ アオヤマのツァイ・ミンツァン代表)。さらに有木氏は「(臺灣発祥のものだけでなく)『OCHABA(オチャバ)』など日本茶を使ったミルク系のドリンクも話題になっている」と語る。
オチャバは19年3月に東京・新宿にオープンした日本茶ミルクティーの専門店。代表的なメニューの「緑茶ロイヤルミルクティー」は獨自にブレンドした靜岡県の茶葉をミルクで煮出したドリンク。トッピングは一見タピオカのようだが、黒蜜を使ったわらび餅だ。10~20代の女性や訪日外國人客を中心に人気を集め、土日は終日混み合う狀況だ。
ミルクを使った甘みのあるお茶にトッピングを加えている點はタピオカドリンクに近い。だが「ポストタピオカとして仕掛けたいという意識は全くなかった」と、同店を運営するオペレーションファクトリー(大阪市西區)の西口アキコ氏は振り返る。
「抹茶を使った商品は多いが、日本茶は歴史や文化があるにもかかわらず、ペットボトルのイメージしかなかった。日本茶に多様性を持たせて、おいしさを広めたいと考えた」(西口氏)。そこでトレンドであるミルクと茶を合わせ、「日本茶を甘く飲める」ことをポイントに開発を進めた。和風スイーツとの組み合わせを考えたところ、わらび餅と相性が良かったのでトッピングに加えたという。
ポストタピオカドリンクとしてオチャバを取り上げたいという取材依頼も多い。だが、「一過性のブームで終わるようなドリンクではないと考えている」と西口氏。新しい飲み方を提案することで、日本茶に対する支持を広げたという自負もあるようだ。タピオカドリンクに端を発したミルク系ドリンクのトレンドが、「日本茶ドリンク」という新しい市場を掘り起こした形といえるだろう。
飲食大手のカフェ・カンパニー(東京・渋谷)も、タピオカドリンクをきっかけに日本茶に注目している。同社はサントリーと手を組み、東京・渋谷に日本茶をテーマにしたカフェ「伊右衛門サロン」を開業した。現在の店舗はフルサービス型だが、今後はスタンド形式の店舗を広げる予定だ(関連記事「日本茶専門カフェに『伊右衛門』の名前をつけた理由」)。
今後も「スタンド形式のドリンク店」は増える
一方、タピオカドリンクブームを仕掛けた側はトレンドの変化を感じているのだろうか。
臺灣茶の専門店「Gong cha(ゴンチャ)」は15年、東京・原宿に1號店を開業。その後も著々と店舗數を広げ、19年11月1日に開業した渋谷スクランブルスクエア店を入れて全國47店舗を展開する(関連記事「渋谷の新名所「スクランブルスクエア」詳報 來場者100萬人目指す」)。1990年代に次ぐ「第2次タピオカブーム」を巻き起こしたトップブランドだ(関連記事「スタバ客の浮気を狙え 大行列が続く臺灣茶カフェの勝算」)。一番人気はタピオカをトッピングしたブラック(紅茶)ミルクティーだが、「ここ最近、タピオカ以外のドリンクを頼む客が増えてきた」(ゴンチャ ジャパン広報の後藤千絵氏)。
同店はリピーター率が高く、多い店では7割以上。複數回來店するうちに、タピオカをトッピングしないドリンクやストレートティーを注文する人が増えてくるそうだ。後藤氏は「來店のきっかけがタピオカでも、通ううちにお茶のおいしさに気づいてくれたのではないか」という見解を示す。
第2次タピオカブームは、「コーヒー以外のミルクを使ったドリンク」を「スタンド形式で楽しむ」という新たな市場を作った。ゴンチャも18年末時點で24店舗だったところ、約1年で2倍にまで店舗を増やした。有木氏の指摘にもあるが、まだまだこのブームは衰えそうにない。當面はタピオカ人気は保ちながら、その裡でミルク系ドリンクやお茶にこだわったドリンクのバリエーションが広がり、スタンド形式のドリンク店がますます増加していく可能性がある。