家じゅうつながるスマート家電
3月さんがつ、上海しゃんはいで開ひらかれた中國ちゅうごく最大さいだい規模きぼの家電かでん博覧はくらん會かい。
超ちょう高こう精細せいさいのテレビなどとともに來場らいじょう者しゃの関心かんしんを集あつめたのが、ネットとつながるスマート家電かでんです。
中國ちゅうごくの大手おおて家電かでんメーカーハイアールは、家いえの中なかのあらゆる家電かでんをネット経由けいゆでつなげるシステムを展示てんじ。帰宅きたく前まえにスマホで給湯きゅうとう器きを操作そうさして入浴にゅうよくの準備じゅんびをしたり、帰宅きたくして玄関げんかんの鍵かぎを開あけるとエアコンや空気くうき清浄せいじょう機きが作動さどうしたりします。
また、新興しんこうメーカーの雲米(Viomi)が出展しゅってんした冷蔵庫れいぞうこには、扉とびらについた21.5インチのモニターで庫くら內ないの食材しょくざいの量りょうや鮮度せんどを管理かんりできるだけでなく、レシピの検索けんさくや、ネット通販つうはんを通つうじて食材しょくざいの注文ちゅうもんも可能かのうです。さらに、このパネルから、電子でんしレンジや炊飯すいはん器きなども操作そうさできます。冷蔵庫れいぞうこがキッチンの「プラットフォーム」の役割やくわりを果はたすという提案ていあんです。
來場らいじょう者しゃの女性じょせいは「ネットにつながる炊飯すいはん器きやエアコンはすでに持もっているけど、スマート冷蔵庫れいぞうこは持もっていないので興味深きょうみぶかいです」と話はなし、メーカーの擔當たんとう者しゃに機能きのうや値段ねだんを熱心ねっしんに聞きいていました。
スマート家電 普及の背景は?
こうしたスマート家電かでん、日本にっぽんでもかねてから開発かいはつされてはいますが、なぜいま中國ちゅうごくで急きゅう拡大かくだいしているのでしょうか。
理由りゆうの1つが、8億はちおく人にんを超こえるネットユーザーの存在そんざいです。その大半たいはんがスマホ経由けいゆの利用りよう者しゃで、中國ちゅうごくでは、スマホ決済けっさいや通販つうはん、タクシーの配車はいしゃ依頼いらいなど、さまざまなサービスが生活せいかつに根付ねついています。その生活せいかつ感覚かんかくと、スマホを使つかって操作そうさするスマート家電かでんの相性あいしょうが合あうようです。
また、共働ともばたらき世帯せたいが非常ひじょうに多おおいという事情じじょうもあります。特とくに若わかい世代せだいにとっては、家事かじにかける時間じかんは少すくなければ少すくないほどよく、家事かじの効率こうりつをあげてくれるなら、多少たしょう、値段ねだんが高たかくても購入こうにゅうしようという意欲いよくが強つよくあります。
中國ちゅうごくの去年きょねんのスマート家電かでんの出荷しゅっか臺數だいすうは約やく1億5000萬臺だい。それが2022年ねんには3億さんおく臺だいに倍増ばいぞうするという試算しさんもあり、市場は拡大かくだいが続つづく見通みとおしです。
日本企業も意欲 パナソニックの挑戦
この中國ちゅうごく市場に、日本にっぽん企業きぎょうはどう臨のぞもうとしているのか。
1987年ねんに北京ぺきんでブラウン管かん製造せいぞうの合弁ごうべん企業きぎょうを設立せつりつしたパナソニック。いわば「中國ちゅうごく進出しんしゅつの老舗しにせ」です。90年代ねんだいに事業じぎょうを多角たかく化かし、「松下まつした」(中國語ちゅうごくご読よみでソンシア)を知しらない人ひとはいないという存在そんざいにまで成長せいちょうしました。中國ちゅうごくの家電かでん市場でのシェアも、一時いちじはおよそ20%に達たっしました。
しかし2000年代ねんだいに入はいると、ハイアールをはじめ、小米(シャオミ)や美的(メイディ)といった中國ちゅうごくメーカーが力ちからをつけてきます。
家電かでん市場も拡大かくだいしますが、パナソニックは売うり上あげを伸のばせず、去年きょねんの中國ちゅうごくでのシェアは2%にとどまっています。
中國ちゅうごくのスマート家電かでん部門ぶもんを統括とうかつする呉ご亮事業じぎょう部長ぶちょうは「性能せいのうでは中國ちゅうごくメーカーに負まけていなかったが、営業えいぎょう現場げんばに十分じゅうぶんな権限けんげんを與あたえなかった結果けっか、スピードで負まけてしまった」と振ふり返かえります。
目を付けたのは爆買いで注目集めたあの商品
そのパナソニックがスマート家電かでん市場で巻まき返かえしを図はかろうとしています。
まずはライバルメーカーの商品しょうひんを徹底てってい分析ぶんせき。さらに、年代ねんだい別べつの消費しょうひ行動こうどうのデータなどをもとに、中國ちゅうごくメーカーがまだ手てを付つけていない領域りょういきを探さぐった結果けっか、「美容びよう・健康けんこう」の分野ぶんやにねらいを定さだめました。
中國ちゅうごくでは、生活せいかつに餘裕よゆうが生うまれてきたこともあり美容びようや健康けんこうに対たいする関心かんしんが急速きゅうそくに高たかまっています。パナソニックは、日本にっぽんでもこの分野ぶんやに注力ちゅうりょくしており、優位ゆうい性せいがあると判斷はんだんしました。そして開発かいはつしたのが、ネットにつながる「スマートトワレ」、つまり便座べんざです。
「えっ?」と思おもわれるかもしれませんが、日本にっぽんの「溫水おんすい洗浄せんじょう便座べんざ」は、かつて日本にっぽんを訪おとずれた中國人ちゅうごくじん観光かんこう客きゃくの爆ばく買かいの対象たいしょうとしても話題わだいになりました。それをスマート化かしようというわけです。
完成かんせいしたスマート便座べんざは、おしりに觸ふれる部分ぶぶんの一部いちぶが金屬きんぞく製せいになっています。座すわるだけで體からだ脂肪しぼうを測定そくていできます。
さらに、備そなえ付つけの棒狀ぼうじょうのキットに尿にょうをかけると、タンパクや潛せん血ち、pHなど6項目こうもくを測定そくていしてくれます。その數値すうちは洗面せんめん臺だいの鏡かがみに表示ひょうじされ、手てを洗あらうときに、自分じぶんの健康けんこう狀態じょうたいを把握はあくできるという仕組しくみです。データはスマホにも転送てんそう・蓄積ちくせきされるので、日々ひびの體調たいちょうの変化へんかも把握はあくできます。
このスマート便座べんざと鏡かがみのセット、価格かかくは4萬よんまん人民元じんみんげん、日本円にほんえんでおよそ70萬円えんしますが、ことし3月さんがつの発売はつばい開始かいし以來いらい、內裝ないそう會社がいしゃなどから次々つぎつぎと引ひき合あいが來きているということです。
スマート化の深化に高級戦略も 中國市場が成長の鍵
このスマート便座べんざと鏡かがみに、若わかい開発かいはつ擔當たんとう者しゃたちが新あらたな機能きのうを加くわえようとしています。それは、鏡かがみに表情ひょうじょうを読よみ取とらせるという機能きのうです。
內蔵ないぞうしたカメラやセンサーが、口角こうかくの上下じょうげやまばたきなど顔かおの筋肉きんにくの微妙びみょうな動うごきを感知かんち。そこから「怒いかり」や「喜よろこび」など感情かんじょうを読よみ取とり、數値すうち化かします。データをスマホで管理かんりすれば感情かんじょうの変化へんかを把握はあくでき、心こころの健康けんこうも管理かんりできると言いいます。
開発かいはつ擔當たんとう者しゃは「親おやが子こどもの気持きもちを知しることができるし、夫おっとが妻つまの機嫌きげんを見極みきわめることもできる。落おち込こんでいるときに適切てきせつに対処たいしょできれば、心こころの不調ふちょうを長引ながびかせることも少すくない」と効果こうかを説明せつめいしました。
パナソニックは中國ちゅうごく市場で、意外いがいな業種ぎょうしゅともコラボしています。高級こうきゅうスポーツカーメーカーのポルシェです。ポルシェ傘下さんかの事務所じむしょにデザインを委託いたくした洗濯せんたく機きがヒット商品しょうひんになっています。
車くるまのホイールを思おもわせる洗濯せんたく槽そうに、スピードメーターふうの操作そうさパネル。しつこい汚よごれも一気いっきの加速かそくで洗あらい落おとしてくれそう!?ヨーロッパメーカーが強つよい高級こうきゅう家電かでんでも、シェアを獲得かくとくしようというねらいです。
呉ご亮事業じぎょう部長ぶちょうは、2%まで落おち込こんだシェアを、まずは5%に拡大かくだいしたいと意気込いきごんでいます。さらに「日本にっぽんに先さきんじた商品しょうひん開発かいはつを中國ちゅうごくでどんどん進すすめていくことで、いずれ日本にっぽんに中國ちゅうごく発はつの家電かでんを輸出ゆしゅつする。それが『日本にっぽんへの恩返おんがえし』になる」と話はなしていました。
成長せいちょうも変化へんかもスピードが速はやい中國ちゅうごく市場。去年きょねん、創業そうぎょう100年ねんを迎むかえたパナソニックが培つちかってきた日本にっぽん型がたものづくりと、中國ちゅうごくのスピーディな市場への対応たいおうが融合ゆうごうし、どのような化學かがく変化へんかが起おきるのか注目ちゅうもくしたいと思おもいます。