日本人にもなじみの深い「楚漢爭覇」(項羽と劉邦の戦い)で、垓下の戦いの際に項羽が殘した『垓下の歌』に深い追想の念を覚えた。數千年前の古代に生きた人の人間性や感情に音楽で切り込み、自身の歌と項羽の時空を超えた対話によって古の情感を再現する在日中國人歌手の荘魯迅はこのほど、1000人規模の上海人民大舞臺で熱唱していた。
「歌さえあれば、この愛は永遠に」が今回のコンサートのテーマだ。30年ぶりに故郷の舞臺で歌を披露する以上に、かつて応援してくれたファンたちと再會し、自ら「私は元気です、皆さんは?」と聲をかけた途端、上海ばかりでなく、日本から駆けつけてきたファンたち(計50人)もアンコールの叫び聲が止みそうになかった。
その後も『涼州詞』、『望月懷遠』など次々と創作を重ね、その歌を熱唱し、満場の喝採を浴びていた。
また、今回のコンサートでは特別ゲストとして、20世紀、日本で最も早くフォークミュージック界に身を投じた小林啟子を招いた。フォークミージック番組(寺田正彥/武藤祐生/森芳樹/石村順)や各種番組視界を數年務めた経験もある実力派だ。
(章坤良 寫真も)
荘魯迅、1956年上海生まれ。1980年歌手デビュー。中國全土で音楽活動を展開。吟遊詩人として、またシンガーソングライターとしても広く知られる。1988年來日。日本語を習得し、東洋大學文學部國文學科に入學。その後は大學院に進み修士學位を取得、修士論文『森鴎外論·その反近代精神の構造』で優秀論文賞を受ける。現在、音楽活動の傍ら、和光大學(非常勤講師)、朝日カルチャーセンター、NHK文化センターなどで漢詩、音楽、中國史、中國語を教える。