『ドラえもん』に出てくるラーメンを食べる「小池さん」を読者は覚えているだろうか?このキャラクターのモデルは、原作者·藤子不二雄氏の友人であり、アニメの師匠でもある鈴木伸一氏だ。東方網は今回の「2019國際少年児童アニメ·映畫展」に際し、日本の東京杉並アニメーションミュージアムへこの鈴木氏を訪ねた。
鈴木伸一氏と彼の作品
訪問した日はちょうど土曜日で、鈴木氏にとって本來は休日だ。しかしミュージアムに行くと優しそうな笑顔で我々を出迎えてくれた。風邪気味だそうだが、銀髪をきちんと整え黒縁のメガネをかけていて「小池さん」にそっくりだ。「ラーメンが好きですか?」と聞くと、「はい、そうです。今でも好きです」と答えた。
寫真説明:ラーメンとの物語を語る鈴木伸一氏
アニメ師匠の養成
オフィスに入ると鈴木氏の経歴が壁に貼ってあった。1933年生まれの同氏は今年86歳。高齢だが元気満々だ。経歴を見ると、8歳から両親と一緒に中國東北で5年間生活。その時、橫山隆一の漫畫『フクちゃん』と出會ったのがきっかけで、後に橫山氏に師事する。そこから漫畫が好きになって、「ディズニーの『白雪姫』に熱中して、40回以上を見ました」、と述べた。
寫真説明:『フクちゃん』を紹介する鈴木氏
日本が第二次世界大戦で敗けた後、氏は両親と一緒に日本に戻った。そして16歳の時、『漫畫少年』に自分の作品を投稿する。22歳の時、漫畫家の中村伊助を頼って上京した。その後、トキワ荘で寺田ヒロオ、安孫子素雄(藤子不二雄A)と會って、「新漫畫黨」へ入會、トキワ荘に引越した。鈴木氏は「私はトキワ荘に入居した4人目の漫畫家なんです」と嬉しそうに語った。
寫真説明:トキワ荘時代の古い寫真
寫真説明:トキワ荘で一緒に暮した漫畫家
トキワ荘に暮して9ヶ月したころ、橫山隆一氏のおとぎプロに入社し、アニメーターとして歩み始めた。しかし、會社では童話アニメの製作が多く、氏はSFなどのアニメが作りたかったのでおとぎプロを退職する。
30歳のとき、藤本弘(藤子·F·不二雄)、安孫子素雄、石ノ森章太郎、つのだじろうなどと「スタジオゼロ」を創立し、1代目、2代目の社長を務めた。同年、手塚治虫から『鉄腕アトム』第34話ミドロが沼の巻を受注したものの、「漫畫家がそれぞれ自分の風格で創作してしまったため、アトムがさまざまな様子になってしまい、手塚先生のお気に召さなかったんです」と笑った。その後、スタジオでは『けもの太郎』、『佐武と市捕物控』などの作品を製作したが、経営問題のため1970年4月に解散。鈴木氏は縮小した人員で引き継ぐ事にした。
その後は監督としてアニメを製作する一方、東京芸術大學の特別講師を務めて、編集した教材を中國語に翻訳したりした。
中日漫畫·アニメの交流に貢獻
鈴木氏は子供の頃に萬籟鳴兄弟の『鉄扇の王女』を見、その水墨アニメの手法を自分の作品に取り込んだ。中國改革開放の1980年、日本アニメーション協會の中嶋興が中國への文化交流団を組織。鈴木氏は手塚治虫と共に日本アニメ産業の代表として、中國に行った。その際、上海美術映畫製作所も訪問して、『鉄扇の王女』の作者の萬籟鳴兄弟と念願の會見を果たした。
1981年、手塚治虫は日本の東京·池袋で「中國アニメ映畫祭」を開き、上海美術映畫製作所の厳定憲や特偉などのアニメの巨匠を日本に招いて、交流を行った。これが縁となり、鈴木氏もこれらの師匠と深い友情を結ぶ。このアニメ映畫祭には多くの観客が詰めかけ、鑑賞した人々は中國アニメの質の高さに驚いたという。
寫真説明:2019國際少年児童アニメ漫畫展の賞狀にサインする鈴木氏
このほど、「2019國際少年児童アニメ漫畫展」が日本の東京で行われ、鈴木氏も審査委員として作品の審査に參與した。これに関して、「今回の作品は子供らしいものが多く、純粋で、天真爛漫な気持ちが現れていて、心がほっとなります。作品の多くが中日友好の要素を取り入れていて、いっそう溫かさを感じました。中日両國の友好が世代から世代へ伝わるように祈っています」と語った。審査の後には50枚の賞狀に一枚一枚サインをしなければならなかった。86歳ということで疲れなかったかどうか尋ねたところ、「中日友好、子供のためなので喜んで書きました」と答えた。
中國アニメへの期待
中國のアニメで最も好きな作品を尋ねたところ、『ナーザの大暴れ(中國の題名:哪吒閙海)』で、その理由はコンテンツが面白くて質もいいし、日本では見たことのないものだから、と答えた。
寫真説明:東方網ネットの読者のために自畫像を書く鈴木氏
関係者によると、中國のアニメ生産量はすでに日本の3倍となっている。しかし日本市場に入った作品と言えばほとんどないのが現狀だ。鈴木氏は「中國アニメはもっと自由に創作でき、娯楽性が高まれば、きっと日本を超えると思います。私はこの4年間、東京芸術大學でアニメを教えましたが、學生の中に二人、中國人がいます。彼らが作るアニメの質はとても高い。中國のアニメは技術的にはもう一定の程度のレベルに達しています。だからコンテンツについて、中國らしくて日本にないものを作るとか、キャラクターにより個性を持たせたら、日本人ファンの目を引くようになる可能性があります。今後、中國のアニメが日本市場に入ってくることを心から期待しています」と述べた。