パンデミックのように突然の広範囲に及ぶ深刻な危機を乗り越えるには、揺るぎない精神力と立ち直る力が求められる。
それらは毎日奮い起こすものではないし、求められる機會は人生においてそうそうない。
心理的資本(psychological capital)は科學的に裡付けされた概念であるが、自分自身、チーム、組織が楽観性、敏感性、機敏性、効力感を維持するために蓄えている資源である。
心理的資本とは、過去15年間にわたり、ポジティブ心理學から派生した実証済みの概念であり、Hope(希望/將來への自信)、Efficacy(効力感)、Resilience(レジリエンス/立ち直る力)、Optimism(楽観主義/やりきる意欲)の頭文字をとり「HERO」とも呼ばれる4つの要素から構成される。
では、HEROの各要素の相乗効果を高めて、1日でも多くポジティブな心理狀態を維持する方法について紹介する。
Hope(希望/將來への自信)
Efficacy(効力感)
Resilience(レジリエンス/立ち直る力)
Optimism(楽観主義/やりきる意欲)
①現実的な楽観主義者になる -
最悪のシナリオを想定して備えたうえで、良い結果を期待する。
最悪のシナリオを十分に想定して、それに対処するための明確な計畫を立てなければならない。
しかし、マイナス面対する恐怖しか見えない考え方や心理狀態になってしまうと、その恐怖のあまりすくんでしまうかもしれない。
そんなときは、危機の先にあるより良い未來に対して意識的にポジティブなイメージをじっくりと描いてみよう。
どんな知識やスキルを新しく磨くことができるだろうか?考え方、行動、プロセスをどう変えれば未來を好転させることができるだろうか?
人々、チーム、組織、社會にもたらすプラス面に目を向け考えることで楽観的になれる。
②根拠のある希望を生み出す -
良い結果を目指す希望の炎を絶やさぬように意志力と達成力を高める
希望を生み出すことは意志力を引き出す目標を立てることである。危機狀態では、まず、士気を高め、目の前の狀況に即した短期の目標が必要である。
次に、目標に到達するまでの経路を3つ以上考えて當面の目標を設定する。
生産的なプロセスで発揮される創造性は、事態が急展開した場合の進展に対応するために必要な機敏性、柔軟性、創意工夫を私たちは備えているという嬉しい確信を深める。
③自己効力感を継続的に高める -
進んでいく道のりの先々で成功できる自信をつける
自信がないと行動が鈍くなったり、行動しなくなったりする。一方、自信に満ちあふれていれば積極的に行動する。
背伸びをし過ぎてやる気をそぐよりは、できることに積極的に取り組める毎日の行動ステップを設定する。
あなたが自信を高める必要がある狀態にあるなら、また、課題が厳しければ厳しいほど、次のステップは小さくした方がいい。
クライアントと一緒に自信を深めるにはどうすればいいのか考える。
たとえば、「前向きな結果を出す自信をつけるには何が必要ですか?」と尋ねる。そうすることで、毎日、さらには毎時、小さいながらもはっきりと分かると勢いと進歩が現れる。
自信が揺らぐときはそれを支える小さな前進を大切にしよう。
④立ち直る力を高める -
悲観的な狀況にあってもあえて明るい兆しを見つけ出し逆境から素早く立ち直る
現実的な楽観主義者であり、根拠のある希望を持ち、徐々にだがはっきりと分かるように自信を高めることは、危機に陥ったときの苦しい時期から素早く立ち直るための力になる。
それに加えて適度に前向きな気持ちを持つことで、さらに立ち直る力が高まる。前向きな気持ちはいろいろな形で現れる。
たとえば、自分の人生のためになることに対して感謝する、困難を分かち合い共有する、相手の苦しみを理解し思いやる、未知に挑むなかで熱意と冒険心を持つ、危機を乗り越えるための目的意識や使命感を持つ、困難を克服するためにチームで協力する喜びを感じる。そして、身體を大切にすることも大事である。
運動や栄養のバランスの取れた食事、睡眠は精神力や立ち直る力を支え、特に、今、大切な免疫力を高める。
最悪のシナリオに備えて計畫しながらも、うまく未來の成長やプラス面に目を向けポジティブなイメージを描く。
目標に到達するまでの経路を3つ以上考えて、それを進んでいくために機敏性と想像力を発揮する。
自分に自信がないと不安になる。コーチングスキルを使って、クライアントが次のステップに踏み出せるように自信をつけさせる。
上記のすべてのほか、危機にあるなかでポジティブな體験を意識的に想起する。つながり、協力し、感謝や思いやりを示すほか、自身の冒険心と目的意識を発揮する。
ウイルスという共通の敵に立ち向かうなかで、何よりも大切なのは私たちの體と健康である。
これまで以上に賢く、前向きに行動することで、なんとしてもこの危機を乗り切ろう。
(タフな)厳しい狀況は永遠には続かない。だが、タフな人々は永遠だ。■ロバート H. シュラー
參考文獻
Luthans,F.,&Youssef-Morgan,C.M.(2017). Psychological capital: An evidence-based positive approach. Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior, 4, 339-366
筆者について
アンディ・クック(AndyCook)氏は、エグゼクティブコーチ、教育者、組織開発、リーリーダーシップ開発の専門家として20年以上の経験があり、教育學の博士號を持つ。
マーガレット・ムーア(Margaret Moore)氏は、米國、英國、カナダ、フランスにおけるバイオテクノロジー業界で17年のキャリアを持ち、2つのバイオテクノロジー企業のCEOおよびCOOを務めた。2000年からは、健康関連のコーチングに軸足を移し、ウェルコーチ・コーポレーションを設立した。ムーア氏は米國コーチング研究所(IOC:the Institute of Coaching)の共同創設者および共同責任者であり、ハーバード大學エクステンション・スクールでコーチングの科學と心理學を教えている。
【翻訳】Hello, Coaching! 編集部
【原文】What You Need in a Crisis: Psychological Capital(2020年3月19日にIOC Resources members onlyに掲載された記事の翻訳。IOCの許可を得て翻訳・掲載しています。)
この記事はあなたにとって
役に立ちましたか?
役に立った!という方は、
右下のWowをクリック!