遴花
晴れやかな入學式が済んで、まもなくの或る日だった。
這是在盛大的入學典禮結束後不久的某一天.
鐘の鳴り渡った校庭に、方々の廊下から生徒たちが溢「あふ」れて來る。
學生們從四面八方的走廊上湧向鐘聲響徹的校園裡.
駈け寄って睦み合っている聲々。桜の木の下のベンチで、何やら小さな本を読んでいるひと。丸鬼をしている快活なひと群。なんとはなしに肩を組んで歩いている人びと。
奔跑著嬉戲作樂的聲音;在櫻花樹下的長凳上閱讀某本小書的人;玩著捉迷藏遊戲的快活人群;漫無目的地並肩散步的人們.
下の運動場から、新入の一年生が賑「にぎ」やかに登って來た。體操の時間の後らしく、みんな上著を脫いで、頬が赤い。
新入校的一年級學生們熱熱鬧鬧地從下面的運動場走了上來.看樣子是剛上完了體操課,她們全都脫掉了外衣,小臉蛋兒紅通通的.
それを上級生たちは、美しい花を選ぶような眼つきで、木立「こだち」の蔭や廊下の曲り角に、待ち伏せしている。
高年級學生們儼然一副遴選美麗花朵的眼神,埋伏在樹木的濃蔭下,或是走廊的轉彎處.
「今度の一年生は、おチビさんが多いわね」
「そう見えるのよ。私たちが入學した時は、もっと小さかったわ、きっと」
「大き過ぎる一年生なんて、ちょっと親しみにくくて厭ァね。あれくらいが可愛いわ」
「まあ、もう目星「めぼし」をつけてるの?」
「こっちでいくらきめたって、一年生だってお人形じゃないんですもの。思うようになりやしなくてよ」
"今年的新生中小矮個可真不少吶."
"看起來是那樣喲.我們剛進校時肯定顯得更矮小吧."
"個頭太大的新生讓人有點難以親近,才討厭吶.她們現在這樣子才可愛嘛."
"餵,你已經盯上目標了?"
"無論我們怎麼自作主張,一年級的新生也並不是任人擺布的木偶呀.怎麼可能想怎麼樣就怎麼樣呢?"
三千子「みちこ」も上著を取りに教室への廊下を真先に駈けて行くと、不意に薄暗い窓際から、背の高い痩せたひとが近寄って來た。ふと驚いて立ち止まる三千子に、ネイビイ・ブルーの封筒を手渡して、
「ごめんなさい、あとでね……」
三千子率先跑到通往教室的走廊上取回自己的上衣.這時,一個瘦高個兒的人突然從微暗的窗戶邊湊了過來,將一個深藍色的信封交到了三千子手中.三千子驚訝得站在原地一動也不動.
"對不起,請你過一會兒再……"
そして、仄白「ほのじろ」い顔をちらりと見せたきり、いそいで曲り角へ消えてしまった。
那個人輕聲地低喘著,只是微微露出一張灰白的臉龐,便一溜煙似地消失在了走廊的拐角處.
三千子はどきどきする胸に、そっと手紙を抱いて、教室へ入ると、もうそこには、ほかの道から先に戻った級友が五、六人、上著を著たり、お河童「かっぱ」に櫛「くし」を入れたりして、なにか騒いでいたが、三千子の姿を見るなり、
三千子把那封信悄悄地擁在怦怦直跳的胸口上,走進了教室.這時,已有五六個同學打別的道路率先返回了教室.她們一邊穿外衣,一邊梳理著自個兒的娃娃頭,嘴裡還嚷嚷著什麼.一看見三千子的身影,就立刻七嘴八舌地嘲弄開來了.
「大河原さん、おめでとう」
「大河原さん、幸福の花が屆いていてよ」
などと、口々にからかっては、三千子の肩を叩いたり、髪の毛を撫でたりして、出て行った。
"大河原,恭喜你呀."
"大河原,你瞧,有人已經送來了幸福之花吶."
她們又是敲打三千子的肩膀,又是撫弄她的頭髮,然後跑出了教室.
見ると、三千子の機の上に、色濃い匂いの菫「すみれ」の花が、小さな束に結んで載っている。はっとして機の中をあけると、教科書の上に、紫インクで書かれた、真白な封筒がひとつ……。
三千子定睛一看,才發現自己的桌子上放著一小束色彩濃豔、芳香馥鬱的紫羅蘭花.她不由得吃了一驚,打開桌子一看,只見教科書上擱放著一個雪白的信封,上面的字跡是用紫色的墨水寫成的……
三千子は、いちどきに両手を引っぱられたように惑った。
倏然間三千子感到自己就像被人拽住了兩隻手似的,不知所措.
「どちらを先きに……?」
あの小暗い窓際に、気高く仄白かった面影が、先ず心に浮ぶので、ブルーの手紙をひらいてみた。
"先讀哪一封呢?……"
這時,那在微暗的窗戶邊上匆匆閃過的灰白而優雅的面影,率先浮現在她的腦海裡.於是,她打開了深藍色的信封: