庭に小屋から出してきたテーブルを置いて、アウトドアチェア「戶外椅子」を先生と圭鬥が納屋から引っ張り出してきてくれた。勿論パラソル「遮陽傘」も設置すると言うサービス心。最後はちゃんと片づけてくれよと心の中で突っ込んでおくのも忘れない。
キャンプをした事のない陸鬥が瞬く間「またたくま」に庭先で出來上がるキャンプ會場に目を輝かせ、庭のテーブルに料理を運ぶ。何事かと集まった烏骨鶏達に巨大化しすぎたキュウリを二つに割っただけの物を放り投げれば、食いしん坊チームが我先にと集まっていた。
「さて、準備も出來たな」
先生がぐるりと俺達の顔を見回し、
「まぁ、いろいろあった怒濤「どとう」の三日間だったが、人生なんてこう言う事の繰り返しだ。今日を乗り越えた自信を経験値「けいけんち」に加えて……」
「「「いただきまーす!」」」
「おい、お前ら俺の話しを聞け!」
「十秒以上スピーチする先生が悪い」
「短っ?!ちょっと先生の持ち時間短すぎない?もうちょっと先生をいたわろうよ綾人ー!」
「陸鬥も熱いうちに食べろよー」
「圭鬥~!」
「ええと、いただきます」
「陸鬥まで?!」
問題はまだ何も解決してないけど、一つ目の山を越えて、俺達は明日から始まる日々に向けて心行くまで釜で焚いたちょっぴりおこげ「お焦げ」のあるお米にたっぷりとカレーをかけて、なくなるまでおかわりをする健康的な遊びを心行くまで堪能するのだった。
我が家は他所様「よそさま」より多分少し、いや、かなり朝が早いと思うのだが、陸鬥の生家「せいか」での生活と大體一緒な為に、俺が水路を開く頃には眠い顔を隠せないままやってきた。
下著類を含めた衣類を宮下の仕事先の衣料コーナーで何著か見繕って「見繕う⇒みつくろう、看著辦,斟酌處理」來てもらい、バアちゃんが大切にとっておいてくれた俺の小さくなった服を引っ張り出してきて、農作業を手伝ってもらうに當たり、著れる物がないか物色した服に著替えて、「おはようございます」と挨拶をしてくれるのだった。もっとも二人とも怪我人なので、農作業もろくにできないが、お互い右手だけ生活なので、至る所でうめき聲が聞こえるのはご愛嬌。決して右手兄弟と言うのはやめてほしい。
陸鬥は最初、一階の俺のすぐ隣の使ってない部屋を使ってもらおうと思うも、俺がネットで買いあさった「かいあさる、到處搜購,搶購」古本「ふるほん、古書」を詰めた本棚の部屋が良いと二階の本部屋を使う事になった。もっとも襖「ふすま」で仕切られた部屋なので、隣の部屋に布団やちいさな茶卓、取り壊される小屋に在った蟲食いで痛んだ古い簞笥を宮下がリメイクして、新しく仕立て直した簞笥に服を詰めた場所が陸鬥の部屋になった。二階には水場もトイレもないから不便だぞと言うも、どうやら本部屋をいたく「甚く、非常厲害」気に入ってくれたようで、昨夜はお風呂に入った後はずっと本を読んでいると言う。
隨分遅くまで起きていたなと思ったものの、
「學校で借りてきた本も捨てられちゃった事があって、ずっと読みたくても読めなかったから……」
恥ずかしそうな告白に改めて篠田家の親に怒りがふつふつとわき上がる。
「まぁ、夏休みだし時間はあるしな。本を読むのは悪くないから止めないけど。だけど、一日どれぐらいか決めておかないと終わりがないから注意しろよ」
「はい。何か勿體なくって何度も読み返してしまいます」
「いや、そこは読み返さずに進もうよ」
完結した物語を読み終えるのがもったいなくて、終わらす「おわらす」事が出來ないと言う可愛らしい理由に確かにと終る事がないと思った物語の結末「けつまつ」に寂しさは半端ないと思うのは今も感じる事だが、
「さて、今日から大工さん達がやってくる。ご飯を食べたら、それまで少し勉強しよう」
「はい」