日本のマーケット調査會社・富士経済が今年6月に発表した外食産業國內市場調査によれば、「唐揚げ」をメインとして提供するイートイン、テイクアウト両方の店舗を対象としたマーケットは、2019年に853億円、そして2020年には1050億円の見込みであるそうです。
前年比で23.1%増という予測値は、同調査の対象となったハンバーガーや宅配ピザなどを凌ぐ數字。コロナ禍にあって、際立って好調だと言えるでしょう。
唐揚げのテイクアウト店舗は、古くから「唐揚げの聖地」と呼ばれてきた大分県中津市に端を発する形で「有名店」が誕生。2010年頃から全國に出店するようになり、2011年の東日本大震災の経済不況化で、さらに出店が加速したと考えられます。
また、その後も勢いは止まらず、上記のレポートによれば、
〈2019年は『から好し』を中心に、『からやま』『からあげ縁』『鶏笑』なども店舗數を増加させ、消費者への認知が広がったことで需要が増加し、市場は2018年比41.0%増となった。2020年も上位チェーンの新規出店が続いている〉
とのことです。
そもそも唐揚げブームが過熱したきっかけは、2014年12月19日、とんかつ専門店『かつや』などの運営で知られるアークランドサービスHDが、淺草の名店『からあげ縁‐YUKARI‐』とコラボし、神奈川県相模原市にからあげ専門店『からやま相模原店』を開店。店舗展開を始めたことにあると筆者は考えています。
その後、しばらくして、すかいらーくグループが手掛ける『から好し』が2017年に新業態としてスタート。2018年6月末には急成長を遂げています。
この2017年から2019年という期間は外食業界において、前述の『かつや』のような「とんかつ店」を新業態として始める企業が急増した時でもあります。しかし、コロナ禍を背景に、そうした企業が次々に、とんかつより価格帯が低く日常性の高い「唐揚げ」業態に移行したと言えるでしょう。
このように、唐揚げ市場の急成長のウラには、消費者目線でのブーム以上に、外食企業目線でも業態として優れていた、という意味合いが大きいのです。そこで、この業態の優れている點について解説したいと思います。
まず、日々の食生活の中で唐揚げ自體の「吃食頻度」が極めて高いことが挙げられます。
唐揚げは、けっして「ごちそう」という位置づけではありません。しかし、いつの時代にも常に「定番のおかず」として不動の地位を築いています。
また、それ単體でもおかずになりますが、脇役的な位置づけをこなすことができるこのも唐揚げならではの話です。例えば、ラーメンやおにぎり、サンドイッチといった主食とのセット、カレーのトッピング、そしてお酒のおつまみ……様々な利用シーンで活躍します。
この背景にあるのは、日本の鳥肉の流通が「丸鳥」での流通でなく、「若鶏(ブロイラー)」の切り身での流通が主であるということです。
唐揚げでよく使用されるブロイラーは、肥育期間が短いため、比較的安い食材として流通しています。さらにブラジルなどの海外から輸入されたものは、他の肉類にはない価格で仕入れることも可能です。
一方、ブロイラーは肉自體に味わいはありません。しかし、肉質はやわらかく、しっかり味付けすれば美味しくいただける食材でもあります。
そのため、第二次大戦後の食糧難を経験した日本の家庭の食卓において、安価な食材としてブロイラーが、さらにそれを手軽に美味しく食べる調理方法として唐揚げが、重寶され、他にはない吃食頻度の高さを維持することができたのです。
古くから吃食頻度の高い料理であった唐揚げ。ですが、こと近年になってそのニーズの拡大に拍車をかけたのが、「食の外部化」にあります。
女性の社會進出や高齢者を含む単身世帯の増加を背景に、家庭で揚げ物料理をする機會が減少しています。それが、揚げ物全體のマーケットの拡大に寄與していると考えられるのです。
外食企業の目線ではどうでしょうか。実は、「唐揚げ専門店」というのは他の業態に比べて運営しやすいという大きなメリットがあります。
唐揚げ専門店は、メニュー作りに関して他の業種メニューのカテゴリーをあまり必要とはせず、絞り込んだアイテムで運営できます。そのため、新規開店からのオペレーションを軌道にのせるのも1週間くらいの短期間で可能です。
また、多くは唐揚げしかないという「アイテムが少ない強み」を活かし、自動フライヤーを導入して中心加熱溫度を考慮した調理設定をすれば、安定した商品提供ができます。そのため仕込みから提供までを専門性のいらないパートやアルバイトで運営しやすいのです。
それでいて、唐揚げは味付けのバリエーションが非常に多彩です。
ちょっと前にブームとなったとんかつ屋の場合、消費者嗜好に合いやすいとんかつソースやおろしぽん酢といった定番のソースで食べさせることに落ち著きやすく、競合店舗間で味の差別化がしにくい傾向にありました。
しかし、唐揚げの場合、チキン南蠻や油淋鶏といった料理があるように、味付けやソースなどのバリエーションに富み、消費者も各々で好みが分かれやすく、味の差別化にも寛容な傾向にあるのです。
そして何より飲食店経営にとって有り難いのが、価格設定を低くできるという點です。前述のように輸入ブロイラーを使えば、低い値付けが可能になり、そのぶん消費者の利用頻度を高められます。こうした點も、他の業態に比べて唐揚げが圧倒的に有利であることの裡付けだと言えるでしょう。
大久保 一彥(経営コンサルタント)
摘自:現代ビジネス
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