お金かねに困こまっている客きゃくに無料むりょうで食事しょくじを出だす「無料むりょう食堂しょくどう」という取とり組くみを奈良なら市しのとんかつ店みせが始はじめました。そのお知しらせのツイートが次々つぎつぎと拡散かくさんし、多おおくの支援しえんが寄よせられています。
困っている人 いつでも無料
ことし5月ごがつ、奈良なら市しのとんかつ店みせが「無料むりょう食堂しょくどう」を開店かいてんするとツイッターに投稿とうこうしました。
「お腹なかがすいても、お家いえにお金かねがないときやお子こさんにおいしいものをお腹なかいっぱい食たべさせてあげたいのにご事情じじょうがあってむずかしいときなどはコソっと店長てんちょうに相談そうだんしてください」
「コソっと無料むりょうでお腹なかいっぱい食たべてもらいます」
「世よの中なかお互たがい様さまですので、お代だいは出世しゅっせ払はらいでもいいですし、忘わすれてもらってもいいです」。
このメッセージに「心こころが溫あたたかくなりました」「感動かんどうしました」など、多おおくの共感きょうかんが寄よせられ、投稿とうこう以來いらい、1萬7000回かい以上いじょうリツイートされました。
笑顔になってもらいたくて
ツイートを投稿とうこうした奈良なら市しのとんかつ店みせは、晝ひるには行列ぎょうれつができることもある人気にんき店てんです。
店長てんちょうの金子きんこ友則とものりさんは、客きゃくから相談そうだんを受うければ、1580円えんの厚あつ切ぎりロースカツ定食ていしょくなど、すべてのメニューを無料むりょうにしています。
「お客きゃくさんに喜よろこんでもらう、そこで笑顔えがおになってもらうというのが僕ぼくたちの仕事しごとなんですよ。無料むりょう食堂しょくどうを利用りようされた方ほうも笑顔えがおになってもらうのが僕ぼくにとってはいちばんうれしいことなんです」(金子きんこさん)
「本當にこういう人がいるんだ」
「無料むりょう食堂しょくどう」を始はじめて半年はんとし。利用りよう者しゃはこれまでに延のべ100人にんを超こえました。
この日ひ親子おやこ5人にんで訪おとずれた人ひとが、「無料むりょう食堂しょくどう」のことを1人でも多おおくの人ひとに知しってほしいと取材しゅざいに協力きょうりょくしてくれました。
男性だんせいは3年ねん前まえに肺はいがんを発病はつびょう。トラック運転手うんてんしゅの仕事しごとを続つづけられなくなり、家族かぞくで外食がいしょくする餘裕よゆうすらなくなりました。
偶然ぐうぜん、「無料むりょう食堂しょくどう」のツイートを目めにしたときは、信しんじられなかったといいます。
男性だんせいは、「取とりようによっては宣伝せんでんのように取とれるわけです。でも、店みせに來きて店長てんちょうと話はなして、ああ、本當ほんとうにこういう人ひとがいるんだなと思おもいました。おいしく満腹まんぷくになったのは久ひさしぶりです」と話はなしていました。
きっかけは北陸の大雪
金子きんこさんが無料むりょう食堂しょくどうを導入どうにゅうするにあたり、困こまっているとうそをついて食たべにくる人ひとがいないか、不安ふあんを感かんじなかったわけではありません。
でも、最終さいしゅう的てきにツイートを決意けついしたのは、ある経験けいけんがきっかけでした。無料むりょう食堂しょくどうの開店かいてんの3か月げつ前まえのことし2月にがつ。記録きろく的てきな大雪おおゆきが北陸ほくりくなどを襲おそいました。
金子きんこさんは、ニュースで被害ひがいを知しって、何なにか応援おうえんしたいと思おもい立たち、福井ふくいなど北陸ほくりくの人ひとを対象たいしょうに、半額はんがくのキャンペーンを実施じっししました。すると、北陸ほくりく地方ちほうから260人にんもの客きゃくが來店らいてんし、大おおきな反響はんきょうを呼よんだのです。
店みせに置おかれたノートには、「涙なみだがでるほどうれしかった」「本當ほんとうにありがとう」など、子こどもから大人おとなまで、わざわざ北陸ほくりくから來きた人ひとたちの感謝かんしゃの気持きもちがつづられていました。
金子きんこさんは、何気なにげないツイートで、思おもいがつながったことに驚おどろかされたといいます。
「半額はんがくになったって交通こうつう費ひのほうが絶対ぜったい高たかいんです。半額はんがくのためだけに來きてるんじゃないというのがすごく伝つたわって、お金かねじゃないところの心こころの響ひびきというのはあるんだなと感かんじました」(金子きんこさん)
そうして、金子きんこさんが始はじめたのが「無料むりょう食堂しょくどう」です。以前いぜん働はたらいていた飲食いんしょく店てんで、店主てんしゅがお金かねに困こまっている客きゃくに無料むりょうで食事しょくじを出だしている姿すがたを見みて同おなじような人助ひとだすけがしたいと考かんがえたのです。
広がる善意の輪
ツイートに込こめた金子きんこさんの気持きもちは、思おもわぬ形かたちで広ひろがっています。一般いっぱんの客きゃくとして、とんかつを食たべに來くる人ひとが増ふえているのです。
売うり上あげに貢獻こうけんすることで、「無料むりょう食堂しょくどう」を応援おうえんする人ひとたちのツイートが、「無料むりょう食堂しょくどう」のことを連鎖れんさ的てきに広ひろめています。
知しり合あいから知しり合あいへと広ひろまっているほか、応援おうえんの手紙てがみや食材しょくざいなども寄よせられています。こうした聲こえが、金子きんこさんを後押あとおししています。
「これだけ応援おうえんしてくれる人ひとがいたら僕ぼく自身じしんも頑張がんばれます。あとは無料むりょう食堂しょくどうの利用りよう者しゃが前進ぜんしんしてもらえるのであればそれがいちばんです」(金子きんこさん)
ツイッターが広ひろげる善意ぜんいの輪わ。助たすけ合あいの新あたらしい形かたちを示しめしているのかもしれません。