四季の歌
作詞・作曲:荒木とよひさ
英訳:山岸勝榮
春を愛する人は
心清き人
すみれの花のような
ぼくの友だち
喜愛春天的人啊
是心地純潔的人
象紫羅蘭花一樣
是我的知心友人
If spring is your favorite time of year,
You surely have a pure heart,
Pure as a violet, smelling so sweetly.
And you're a precious friend of mine.
夏を愛する人は
心強き人
巖をくだく波のような
ぼくの父親
喜愛夏天的人啊
是意志堅強的人
象衝打巖石的波浪一樣
是我可敬的父親
If summer is your favorite time of year,
You surely have a strong heart,
Strong as an ocean-breaker, dashing so forcefully.
And you're just like my dear dad.
秋を愛する人は
心深き人
愛を語るハイネのような
ぼくの戀人
喜愛秋天的人啊
是情感深厚的人
象抒發愛情的海涅一樣
是我心愛之人
If autumn is your favorite time of year,
You surely have a deep heart,
Deep as a poet like Heine, singing so passionately.
And you're a love poet of mine.
冬を愛する人は
心広き人
根雪をとかす大地のような
ぼくの母親
喜愛冬天的人啊
是心地寬廣的人
象融化冰雪的大地一樣
是我慈祥的母親
If winter is your favorite time of year,
You surely have a big heart,
Big as Mother Earth, thawing the snow so gently,
And you're just like my dear mom.
荒木とよひさは昭和18年(1943)、中國・大連生まれ。日大芸術學部在學中から音楽活動を始めました。
昭和39年(1964)にスキーで大骨折し、2年半という長期入院。その折、親切にしてくれた看護婦たちに感謝の気持ちを込めて作ったのがこの歌です。看護婦たちからその友人・知人たちへと広まっていきましたが、作詞・作曲者の名前は知られないままでした。
昭和51年(1976)、ニッポン放送の生放送番組『あおぞらワイド』にこの曲のリクエストが寄せられましたが、番組のパーソナリティもスタッフも知らない歌だったので、聴取者に情報提供を呼びかけました。それにより、この歌は注目を集め、やがて荒木とよひさが作詞・作曲者だと判明しました。
同年、レコード各社が競作しましたが、聲質が歌の內容に合っていたせいか、芹洋子の歌がいちばん人気を集め、大ヒットとなりました。
中國でも、『四季之歌』というタイトルで広く愛唱され、千昌夫の『北國の春』と並んで、日本の代表的な歌の1つとして記憶されているといいます。
この歌は、上がり下がりが少なくて歌いやすいメロディと、単純で覚えやすい歌詞が大ヒットの要因でしょう。
心の清い友人と心の強い父親、心の深い戀人、心の広い母親がそろっていれば、人間関係については、まずあまり不満はいえません。人生に欠かしたくない4人を四季に當てはめたのが、この歌詞の秀逸な點だといえましょう。
荒木とよひさは、30代半ばから作詞に専念するようになり、テレサ・テン『愛人』『時の流れに身をまかせ』『つぐない』、堀內孝雄『戀唄綴り』、 森昌子『哀しみ本線日本海』、高山厳『心凍らせて』、桂銀淑『すずめの涙』など、多くのヒット曲を生みました。