「頭が赤い魚を食べた貓」が少し話題になっているみたいです。
短い文ではありますが、形容詞「赤い」と名詞修飾節の「魚を食べる」がそれぞれ何を修飾しているかによって5つの異なる解釈ができてしまいます。面白さもありますがややこしいですよね…。
「頭が赤い魚を食べた貓」について
日本語は文節を並べ替えられる
文節とは文を句切りながら発音して、実際の言語としてはそれ以上に句切ることはない個々の部分、文を実際の言語として不自然でない程度に區切った最小の単位のことです。私は小學校のときに「ね」を加えて區切ることができるのが文節だと學びました。
① 私たちは/調理実習で/カレーを/作りました。
② 私たちは/カレーを/調理実習で/作りました。
③ 調理実習で/私たちは/カレーを/作りました。
④ 調理実習で/カレーを/私たちは/作りました。
⑤ カレーを/私たちは/調理実習で/作りました。
⑥ カレーを/調理実習で/私たちは/作りました。
文末は固定してそれ以外の文節は大體入れ替えることができます。どちらかというと文節ではなく助詞の後で區切って入れ替えるというほうが正しいかもしれません。ただし格助詞「から」「まで」「の」などは文節の順番に制約を與えます。
修飾節と被修飾名詞は遠くてもいい
①【頭が赤い魚】を食べた貓
②【頭が赤い】魚を食べた【貓】
①は修飾節「頭が赤い」と被修飾名詞の「魚」は連続して接続されていますが、②は修飾節「頭が赤い」と被修飾名詞「貓」の間に別の言葉が入っています。
文節區切りで順番を入れ替えられる性質上、修飾節と被修飾節は離れていても問題ありません。もともと同じ文でもどこで區切って何に修飾させるかにより異なる解釈が可能になります。ただしあまりに距離が離れているとダメなときもあります。
「頭が赤い魚を食べた貓」の5通りの解釈
文節の順番を入れ替えられる性質、そしてお互いに離れていても修飾節と被修飾節は結び付く性質が「頭が赤い魚を食べた貓」に全部で5つの解釈を與えています。一つずつ見ていきましょう。
①貓は、頭が赤い魚を食べた
修飾節が「頭が赤い魚を食べた」で被修飾節が「貓」なら、「貓は、頭が赤い魚を食べた」と言い換えることができます。
②貓の頭は、赤い魚を食べた
助詞「が」は名詞修飾節內の主語につくという性質があります。ですから修飾節が「頭が赤い魚を食べた」なら、この助詞「が」はもともと「は」に入れ替えることができるということです。すると「頭は赤い魚を食べた」になります。殘ったのは被修飾節の「貓」で、これが名詞修飾節內の主語「頭」と繋がります。
なので「貓の頭は、赤い魚を食べた」と言い換えることができます。
③頭が赤い貓は、魚を食べた
修飾節が「頭が赤い」と「魚を食べた」の2種類が同時に「貓」を修飾すると、「頭が赤い貓は、魚を食べた」と言い換えることができます。
④頭は、赤い魚を食べた貓(の人)
この時の助詞「が」が「雲が人の顔の形みたい」の「が」と同じ用法だとした時に、顔は貓で、體は人というキメラを想像できます。この時「頭は、赤い魚を食べた貓(の人)」と言い換えることができます。頭は貓で、體は人のものです。
⑤頭は赤くて、魚を食べた貓(の人)
この時の助詞「が」が「雲が人の顔の形みたい」の「が」と同じ用法だとした時に、形容詞「赤い」が「頭」を修飾すると、「頭は赤くて、魚を食べた貓(の人)」と言い換えることができます。頭は貓で、體は人のものです。
まとめ
日本語は文節で順番を入れ替えられるので、修飾節と被修飾節に距離があっても正しい日本語として認識できます。ただし、話者の意図したことを正しく理解できるかどうかは文脈次第、場合によっては運次第です。
通常このように複數の解釈ができる文や紛らわしい文には読點を打って意味を限定しますので、意思疎通できなくなるほど分からなくなることはまずありません。萬が一伝わらなければ言い換えればいいだけの話です。