小學校時分しょうがっこうじぶんの話はなしであります。
這是小學時代的故事。
正雄まさおの組くみへ、ある日ひのこと知しらない女おんなの子こがはいってきました。
有一天,正雄的班裡來了一個不認識的女孩。
「みなさん、今日きょうから、この方かたがお仲間なかまになられましたから、仲なかよくしてあげてください。」と、先生せんせいはいわれました。
老師說:同學們,從今天開始,這個小女孩將成為我們的夥伴,請大家好好相處。
知しらない人ひとがはいってくることは、みんなにも珍めずらしさを感かんじさせました。正雄まさおばかりではありません。他國たこくからきた人ひとに対たいしては、なんとなくすこしの間あいだははばかるような、それでいて早はやく親したしくなって、話はなしてみたいような気持きもちがしたのであります。
班裡來了一個不認識的人,大家都覺得很稀奇。不僅僅正雄這樣覺得。對來自別的國家的人,在一段時間內總是會有所顧忌,但儘管如此還是想早點變得親近起來,想試著和他們說話。
それほど、他國たこくの人ひとのだれか、知しらない遠とおい國くにからきた人ひとだという、一種しゅの憧あこがれ心ごころをそそったのでした。はじめの二、三日にちは、その女おんなの子こに対たいして、べつに親したしくしたものもなかったが、また、悪口わるくちをいうようなものもありませんでした。
也就是說,從一個不熟悉的遙遠國家來的人,會勾起我們心內的一種憧憬。剛開始的兩三天裡,雖然沒有人對那個女孩特別的親近,但是也沒有人說她壞話。
だんだん日ひがたつと、こんどは反対はんたいに、獨ひとりぼっちの女おんなの子こを、みんなして、悪口わるくちをいったり、わざと仲間なかまはずれにしたりして、おもしろがったのでした。その女おんなの子この姓せいは、水野みずのといいましたが、顔かおつきが、どこかきつねに似にていましたところから、だれいうとなく「きつね」というあだ名なにしてしまいました。
日子一天天的過去,這次正好相反,大家聚一起說著這個孤零零的女孩的壞話,故意孤立她,覺得這樣很有趣。那個女孩的姓是水野,但是因為長相有點像狐狸,所以不知道誰給她取了「狐狸」這個綽號。
休やすみの遊あそぶ時間じかんになると、みんなは、女おんなの子こを取とり巻まいて、「きつね、きつね。」といって、はやしたてました。
一到休息玩耍的時間,大家就會圍著這個女孩,「狐狸,狐狸」的說著,嘲笑她
その女おんなの子こは、負まけぎらいな、しっかりした子こでしたけれど、相手あいてが多數たすうなので、どうすることもできませんでした。それに、知しらない土地とちの學校がっこうにはいったことですから、小ちいさくなって、こごんで黙だまっていましたが、ついにたまらなくなって、泣なき出だしてしまいました。しかし、時間じかんになって、教室きょうしつへはいる時分じぶんには、いつものごとく泣なきやんでいましたために、先生せんせいは、ちっともそのことを知しりませんでした。
雖然她是個不服輸、很堅強的孩子,但是因為對方人數太多,所以什麼也做不了。而且,因為進了這個陌生的地方的學校,就變得渺小,卑微,她一直都在沉默著,但是,終於忍不住哭了出來。可是,時間一到,等進了教室,她就會和往常一樣停止哭泣,所以老師一點都不知道這些事情。
ある日ひのこと、正雄まさおの家うちへ、知しらないおばさんがはいってきました。
有一天,正雄的家裡來了一個陌生的阿姨。
「私わたしの家うちの娘むすめとお坊ぼっちゃんとは、學校がっこうで同おなじ組くみだそうでございます。それで、今日きょうは、おねがいがあって上あがりました。娘むすめが、毎日まいにち、學校がっこうで、きつね、きつねといわれますそうで、學校がっこうへゆくのをいやがって困こまりますが、どうかお坊ぼっちゃんにお願ねがいして、みんながそんなことをいわないようにしていただきたいものです……。」と、頼たのみました。
「聽說我家女兒和你家少爺在學校是同一個班的,所以,今天我有一個請求,就過來了,據說我女兒每天在學校都被說成狐狸,所以她不想去學校了,這讓我們很困擾,能否拜託下你家少爺,請他幫忙讓大家不要再那樣說了「阿姨拜託道。
正雄まさおの家うちと水野みずのの家うちとは、あまりそう遠とおくなかったので、それで、彼女かのじょの母親ははおやがきたものと思おもわれます。
正雄家和水野家離得並不遠,因此,想來來的是她的母親。
學校がっこうでは、正雄まさおも、いっしょになって悪口わるくちをいった一人ひとりなのでした。なかには、まったくそんな悪口わるくちなどをいわずに、黙だまっていた生徒せいともありました。いま、正雄まさおは、自分じぶんの行為こういに対たいして、気恥きはずかしさを感かんぜずにはいられなかったのです。
在學校,正雄也是說壞話那些人中的其中一員,在那些人裡面,也有完全沒有說過那樣的壞話一直沉默的學生。現在,正雄對自己的行為不由得感到羞恥。
「それは、お気きの毒どくのことでございます。うちの正雄まさおに、あとからよくいいきかせますから……。」と正雄まさおのお母かあさんは、水野みずののおばさんに答こたえられました。
「那也太可憐了,一會我會好好告訴我家正雄的」正雄的母親回答了水野家的阿姨。
女おんなの子この母親ははおやが帰かえった後あとで、正雄まさおは、お母かあさんから、弱よわいものをみんなしていじめることは卑怯ひきょうなことだといわれて、正雄まさおは、真まことに悪わるかったと感かんじました。
女孩的母親回去之後,母親告訴正雄,大家聚一起欺負弱小者這是一件很卑鄙的事情,正雄感到非常的不好意思。
あくる日ひから、正雄まさおは學校がっこうへいって、みんなが、「きつね、きつね。」といって、からかった時分じぶんに、自分じぶんはいわなかったばかりでなく、みんなに、「弱よわい女おんなの子こをいじめるのは、卑怯ひきょうだから、よそう。」といいました。
從第二天開始,正雄去了學校,在大家說著「狐狸,狐狸」去嘲笑女孩的時候,他不僅不那樣做,還跟大家說「欺負弱小的女孩,是懦弱的表現,不要再嘲笑她了」
正雄まさおのいったことを、ほんとうだと思おもって悪口わるくちをいうのをよしたものも多數たすうありましたが、なかには、「君きみは、きつねの味方みかたになったのかい。」といって、あざ笑わらったものもあります。
雖然有多數人認為正雄說的對而不再說女孩的壞話了,但是,也有人嘲諷正雄說「你是狐狸的同伴嗎」。
しかし、いままでのように、水野みずのに対たいして、「きつね。」といって、からかうものがなくなりました。ただ、ときどき忘わすれていたのを思おもい出だしたように、彼女かのじょがおとなしく遊あそんでいるところへいって、「きつね。」といいますと、彼女かのじょは、もう負まけていずに、反抗はんこうしました。そして、男おとこの子このほうが、しまいには逃にげ出だしてしまったのです。
可是,像以前那樣對著水野說「狐狸」去嘲笑她的人慢慢的沒有了,只是,偶爾就像想起了被遺忘的事那樣,在她安靜的玩耍的時候,故意說:「狐狸」,但她不會再認輸,反而開始反抗了。然後男孩們最後都逃開了。
正雄まさおと彼女かのじょとは、だんだん仲なかよしになってまいりました。正雄まさおのおかげで、このごろは學校がっこうへいっても、みんなからいじめられないのを喜よろこんでいました。そして、どうか自分じぶんの家うちへ遊あそびにきてくれるようにといいました。
正雄和女孩漸漸的關係變好起來了,多虧了正雄,她很高興,最近就算去了學校,也沒有被大家戲弄。於是她請正雄到自己家來玩。
ある日ひのこと、正雄まさおは、彼女かのじょの家うちへ遊あそびにゆきますと、女おんなの子この母親ははおやはたいそうお禮れいをいわれました。そして、正雄まさおがよく自分じぶんの子供こどもをいたわってくれたといって、お菓子かしなどをくださいました。
有一天,正雄去了她家玩,女孩的母親非常感謝他,說正雄很照顧自己的女兒,還給了正雄點心。
女おんなの子このお父とうさんは、すでに死しんでなかったのです。その家うちは、彼女かのじょとお母かあさんとの、さびしい二人ふたりぎりの生活せいかつでありました。女おんなの子こは、絵本えほんを出だしたり、お人形にんぎょうを出だして見みせたりしました。二人ふたりは、いっしょに、その絵本えほんをひろげてながめていましたが、その遊あそびにも飽あきた時分じぶんでした。
女孩的父親已經去世了,那個家裡,只有女孩和母親兩個人相依為命。女孩拿出了圖畫書,還有人偶給正雄看,兩個人一起翻開了圖畫書來看,但是這個消遣也有膩了的時候。
「ああ、私わたしこの箱はこの中なかに、大事だいじにして持もっている、青あおい石いしのボタンがあってよ。亡なくなられたお父とうさんからいただいたの。これを、あなたにあげますわ。」といって、彼女かのじょは、小ちいさな蒔絵まきえのしてある香箱こうばこのふたを開あけて、中なかから、三個このボタンを出だして、正雄まさおの手てに渡わたしました。
「啊,對了,我這個箱子裡有我珍藏的藍色石紐扣,是去世的父親給我的,我把這個送個你吧」她說著,打開了有著小小泥金畫的香盒子的蓋子,從裡面拿出了三個紐扣,遞到了正雄的手裡。
正雄まさおは、それをしみじみと見みながら、きれいなボタンだと思おもいました。青あおい色いろが、いかにも美うつくしかったのです。「お母かあさんに聞きかなくて、しかられはしない?」と、正雄まさおはいいますと、
正雄仔細的看著那紐扣,覺得非常漂亮,這藍色真的很美。
「你不問下你母親,不會被責罵嗎」正雄說
「私わたしのですから、あげてもいいの。」と、彼女かのじょは笑わらいながら答こたえました。
「這是我的東西,送給你也沒問題」她笑著回答到
正雄まさおは、それをもらって、家うちに帰かえったのでありました。
正雄拿著紐扣回到了家裡
學校がっこうへゆくと、二人ふたりは、家うちで遊あそんだようには親したしく、みんながなにかいうかと思おもって、できませんでした。
一去到學校,想著大家可能會說些什麼,兩個人就不能像在家裡玩一樣那樣親近。
それは、正月しょうがつのことでありました。學校がっこうが十日とおかあまり休やすみがあった、その後あとのことです。學校がっこうへゆくと、水野みずのの姿すがたが見みえませんでした。どうしたのだろう? かぜでもひいて休やすんでいるのでなかろうかと正雄まさおは、思おもっていました。
那是過年時候的事情,學校放了十多天假,假期結束之後,一去到學校就沒看到水野的身影,怎麼回事,正雄心想,是不是因為感冒請假休息了呢。
ある日ひのこと、先生せんせいは、みんなに向むかって、「水野みずのさんは、遠とおい國くにへ引ひっ越こしなすって、學校がっこうを退ひきましたから、空あいている席せきを順じゅんにつめてください。」といわれました。正雄まさおは、はじめてそれと知しってびっくりしてしまったのです。
有一天,老師對大家說「因為水野要到很遠的國家去,已經退學了,請按順序把空著的座位坐好。」正雄第一次聽說這事,驚到了。
「どこへ越こしていってしまったろう。」と、正雄まさおは、彼女かのじょを思おもい出だしてさびしい気きがしたのであります。
「搬到哪裡去了呢」正雄想起了她,覺得很孤單。
正雄まさおは、彼女かのじょからもらった、三個このボタンを取とり出だしてながめていました。はじめは、それほどとも思おもわなかったのが、だれでも、このボタンを見みた人ひとは、「まあ、きれいなボタンだこと。」といって、ほめぬものはなかったのでした。
正雄拿出她送的三顆紐扣來看,雖然剛開始看並不會覺得特別好看,但是無論是誰,只要是看到這紐扣的人,沒有人不稱讚「好漂亮的紐扣啊」
そのうちに、春はるとなりました。空そらの色いろは美うつくしく、小鳥ことりは鳴ないて、いろいろな花はなが咲さきました。正雄まさおはこうした景色けしきを見みるにつけて彼女かのじょのことを思おもい出だしました。
很快就到春天了,天空的顏色很美,小鳥鳴叫著,各種花都盛開了,每當正雄看到這些景色就會想起關於她的事情。
ちょうど彼女かのじょが、學校がっこうへ上あがったときには、唇くちびるをはらして、髪かみをみょうな形かたちに結ゆっていたので、どこか、その顔かおつきがきつねに似にていると思おもったのが、後のちには、そうでなかったこと。そして、その目めの色いろのうるんで、やさしみのあったのが、ちょうど、この春はるの空そらを見みるときに感かんじるのと似にたものがあったような気きがして、正雄まさおは、空想くうそうにふけりながら、うっとりとしたのであります。
正好她上學校的時候,嘴唇會微微張開,把頭髮梳成一個奇怪的形狀,雖然以前覺得她的臉和狐狸很像,但是後來就不這樣想了。而且,她眼睛顏色很潤,藏著溫柔,感覺正好和看春天的天空的時候的感覺相似,正雄沉浸在空想中,出了神。
「なんで、黙だまっていったんだろうか? そして、手紙てがみもくれないのだろうか。遠とおい國くにってどちらの方ほうなんだろう……。」と、正雄まさおは思おもいました。
「為什麼你什麼都沒說呢,而且連封信都不寄給我嗎,遙遠的國家是哪個方向呢」
正雄想著。
三個このボタンだけは、まだ、彼かれの手てに殘のこっていました。正雄まさおは、それを糸いとにつないで、持もって遊あそんでいました。その青あおい色いろは、水みずの色いろのようにも、また空そらの色いろのようにも、ときには、海うみの色いろのようにも、光線こうせんの具合ぐあいで、それは、それは、美うつくしく見みえたのであります。このボタンを見みた人ひとは、だれでもちょっと立たち止どまって、じっと目めをその上うえに落おとさないものはありませんでした。知しらない人ひとは、黙だまって見返みかえってゆきました。知しった人ひとは、「まあ、美うつくしいボタンだこと、ちょっと見みせてください。」といって、掌てのひらの上うえに載のせてながめたのであります。
只有這三顆紐扣還留在他手上,正雄用線把它們連接起來,帶在身上去玩,那藍色,既像水的顏色,又像天空的顏色,偶爾還會像大海的顏色,在光線的穿透下,看起來非常美麗,看到這紐扣的人,無人不駐足觀望。不認識的人默然回首,認識的人就說著「好漂亮的紐扣啊,請給我看一下吧」然後把紐扣放在手掌上細細凝望。
しかし、だれも、この青あおいボタンが、石いしで造つくられたものか、貝かいで造つくられたものか、判斷はんだんに苦くるしんだのでありました。
但是,無論是誰,都會苦惱於這個藍色的紐扣到底是用石頭做的,還是用貝殼做的。
「この青あおいボタンを、一つくださいな。」と、正雄まさおは、たくさんの人ひとからいわれました。けれど、このボタンをなくしてしまうことは、彼女かのじょに対たいする思おもい出でからも、遠とおく離はなれてしまうことだと考かんがえて、彼かれは、だれにもやらなかったのであります。
「請給我一個這個藍色紐扣吧」很多的人這樣對正雄說過,但是,他覺得沒有了這紐扣,對她的思念都會變得很遙遠了,所以,他誰也沒給。
「このボタンを僕ぼくにくれた、女おんなの子この居所いどころがわかって、そして聞きいてみなければあげられない。その女おんなの子こはお父とうさんからもらって、大事だいじにしていたのを僕ぼくにくれたのだから……。」と答こたえました。
「清楚把這個紐扣送給了我的女孩的下落並且先問問她的意見我才能送出去。因為她送給我的是她從她父親那裡得到了並且一直都很珍惜的東西」他回答到。
みんなは、「もう、いままで、なんの便たよりもないのだから、その女おんなの子この居所いどころのわかりっこはない。」といいました。
「至今為止,音信全無,怎麼可能會知道那個女孩的下落」大家說
しかし、正雄まさおは、青々あおあおと晴はれた大空おおぞらを見渡みわたして、「この、空そらの下したのどこかに、きっと女おんなの子こは、お母かあさんと住すんでいるのだろう……。」こう考かんがえると、いい知しれぬ悲かなしさと、なつかしさとが、感かんじられたのであります。
可是,正雄瞭望著蔚藍而晴朗的天空,「在這片天空之下的某個地方,一定有女孩和她的母親住在那裡吧……」這樣一想,就感覺到了無法預知的悲傷和懷念。
ある日ひのことでした。近所きんじょに住すむ、脊せの高たかい、顔かおの黒くろい男おとこが、「坊ぼっちゃん、私わたしに、どうかこのボタンを一つください。私わたしは、これを時計とけいのかぎにぶらさげておきます。私わたしは、汽車きしゃに乗のって、方々ほうぼうを歩あるくのが勤務きんむですから、どこかで、そのお嬢じょうさんが私わたしの乗のっている汽車きしゃにはいっておいでになり、私わたしの胸むねにぶらさがっている、この青あおいボタンを見みて、どうして私わたしが手てに入いれたかとおたずねにならんものでもありません。私わたしの乗のっている汽車きしゃは、幾いく百マイルも先さきまでゆき、その間あいだに、數かぞえきれないほどの停車場ていしゃばを通過つうかするのですから……。」といいました。
有一天,住在附近的高高的臉黑的男人說「少爺,請給我一顆紐扣吧,我會把它懸掛在這個手錶的鑰匙上,我呢,坐列車去各個地方走動是我的工作,所以,在某個地方,那位小姐會登上我的列車,看到掛在我胸前的這個藍色紐扣,可能會來問我為什麼我會有這個,我的列車,要經過幾百英裡遠的地方,在這期間,會經過數不完的停車場……」
正雄まさおは、この若わかい汽車乗きしゃのりのいうことを聞きくと、なるほど、そうしたことがあるかもしれないと思おもいました。それで、女おんなの子この居所いどころがわかったら、すぐに知しらせてくれるようにという約束やくそくで、この男おとこに青あおいボタンを一つ分わけてやりました。
正雄聽了這位年輕的火車駕駛員的話,的確,他覺得可能會有這樣的事情發生。於是,和他約好,讓他知道女孩的下落之後馬上通知他,然後分給了這個男人一個藍色紐扣。
またある日ひのことでありました。正雄まさおは、家うちの前まえで遊あそんでいますと、金魚きんぎょ売うりが通とおりました。金魚きんぎょ売うりは、みんなを見みると、金魚きんぎょのはいっているおけを地ちに下おろしました。みんなは、そのまわりに集あつまって、金魚きんぎょをのぞいて見みたのです。尾おの長ながいのや、円まるいのや、また黒くろと金色きんいろのまだらなどの金魚きんぎょが泳およいでいました。
又另一天,正雄在家門前玩耍的時候,賣金魚的商販經過了,金魚販看了看大家,把裝著金魚的桶放在了地上。大家都聚集在那周圍看金魚,尾巴長的、圓的、全黑的、和有著金色斑點的金魚在遊動著。
そのとき、金魚きんぎょ売うりは、正雄まさおの持もっていた青あおいボタンを見みつけて、目めをまるくしながら、「坊ぼっちゃん、いい金魚きんぎょをあげますから、そのボタンを一つくださらないか?」と、頼たのみました。
那時,金魚販發現了正雄拿著的藍色紐扣,他一邊轉動著眼睛一邊請求到「小少爺,我給你漂亮的金魚,你能給我一個紐扣嗎」
正雄まさおは、金魚きんぎょ売うりのおじさんに、青あおいボタンの由來ゆらいを話はなしたのです。すると、金魚きんぎょ売うりは、「坊ぼっちゃん、私わたしは、こうして、諸國しょこくを流浪るろうします。それは、どんな村むらでも、また小ちいさな町まちでも、春はるから夏なつにかけて、歩あるいてまわります。この青あおいボタンを私わたしのかぶっている笠かさのひもに結むすびつけておいたら、いつか、そのお嬢じょうさんが、金魚きんぎょを買かおうとなさる時分じぶんに見みつけて、どこから、この青あおいボタンを手てに入いれたかとお聞ききなさらないものでもありません……。」といいました。
正雄和金魚販叔叔說了這藍色紐扣的由來,於是,金魚販說「小少爺,我呢,像這樣在各個地方流浪著,那樣的話,無論哪個村莊,還是小城鎮,從春到夏,都在轉悠著,如果把這個藍色紐扣串在我戴的鬥笠的繩子上的話,總有一天,那個小姐會在想買金魚的時候發現,就可能會問我是從哪得到的這個藍色紐扣。」
正雄まさおは考かんがえましたが、なるほど、この金魚きんぎょ売うりのいうことは、ありそうなことでした。そこで、青あおいボタンを一つ分わけてやりました。金魚きんぎょ売うりは金魚きんぎょを、正雄まさおがいらないといったのに、三びきくれました。
正雄想了想,的確,這個金魚販說的看起來會發生。於是,分了一個藍色紐扣給他。明明正雄都說不要金魚了金魚販還是給了他三條金魚。
正雄まさおの持もっていた、青あおいボタンは、殘のこり一つになりました。彼かれはこの一つのボタンだけは、けっしていつまでも放はなすまいと思おもいました。いつになったら、停車場ていしゃばで、また、汽車きしゃの中なかで、あの男おとこは、彼女かのじょに出であうでしょうか。そして、またあの金魚売きんぎょうりは、いつになったら、彼女かのじょの住すんでいる町まちへ著つくでしょうか。
正雄只剩下一個藍色紐扣了,他想著這僅剩的一個紐扣絕對不能再給出去了。在某個時候,在停車場,或者列車裡,那個男人會碰到她吧,並且,還有那個金魚販,在某個時候,會到了她居住的城鎮吧。
三びきの金魚きんぎょは、まだ達者たっしゃで水盤すいばんの中なかに泳およいでいます。正雄まさおは、青あおいボタンの一つをまくらもとに置おいて寢ねたある晩ばんに、赤あかい家うちのたくさん建たっている港みなとの景色けしきを夢ゆめに見みたのでありました。
三條金魚還很健康的在水裡遊動著,在正雄把這一個藍色紐扣放在枕邊睡覺的某個夜晚,他在夢裡見到了建著很多紅房子的港口的景色。