■「スジャータ」が獻上したお粥
2021年1月20日は「大寒」の節気の最初の日でした。そして偶然にも、「臘八節(臘八節/ラバジエ)」という伝統行事の日にも當たりました。
「臘八」というのは舊暦12月8日のことです。臘八粥(ラバジョウ)と呼ばれる、もち米やアズキ、ハスの実、リュウガン、ナツメ、落花生などを一緒に煮たお粥(「七草粥」に似た、8種類の穀物からなるお粥)を食べ、先祖や神々にお供え物をしたり、お祈りをしたりする祭日として知られています。
では、「臘八節」に臘八粥を食べるのはどうしてでしょうか。最も有名なのは仏教に関わる逸話です。釈迦が長年に渡る苦行を続け、骨がやせ細り、いまにも修行を斷念しかねない狀態になったとき、羊飼いの娘スジャータが乳粥を釈迦に獻上したというものです。乳粥を飲み、體力を回復した釈迦はその後、舊暦12月8日のときに菩提樹の下で悟りを開いたとされています。
そんな仏教の記念行事として、仏教徒は毎年この日になると、法會を開き、米と果物でお粥を作って仏に供えます。中國ですと、大量のお粥を庶民に無料で振る舞う名剎も少なくありません。殘念ながら今年は新型コロナウイルス感染症の予防・抑制のために、多くの寺院がこうした恆例行事の中止を餘儀なくされてしまいましたが、仏教とお粥が密接な関係にあることが分かることでしょう。
ちなみに釈迦牟尼に乳粥を獻上した女性であるスジャータという名前は、「良い生い立ち、素性」を意味し、中國語では善生(ぜんしょう)、難陀婆羅(ナンダバラ)などの名前に訳されています。日本ではコーヒーのフレッシュミルクのブランド名としても知られますが、なかなか奧深いネーミングであることに気付かされます。
■「臘八粥(ラバジョウ)」をめぐる様々な逸話
じつは、臘八節、そして臘八粥の由來をめぐる伝承や逸話には、他にもさまざまなバージョンがあります。
1.「鬼滅」の小豆
伝説上の人物となりますが、「五帝」の一人である頷頊(zhuān xū)氏(公元前2342-公元前2245年)の息子3人が死後、鬼になってしまい、子どもを怖がらせます。野放図に行動する鬼が唯一、苦手にしていたのが小豆でした。そのため、小豆で鬼を退治する伝承が生まれ、小豆を煮て粥を作る慣習につながったと言われています。(注)
(注)沖縄でも、琉球王國の時代から、舊暦12月8日に「ムーチー」(餅)を作り、特に子供たちの魔よけとしてきた慣習がある。(參考:Wikipedia)
2.朱元璋の苦境を救ったお粥
明の始祖であり、初代皇帝である朱元璋が投獄の憂き目に遭ったことがあります。餓えと寒さに苦しんだ舊暦12月8日、朱元璋は偶然にも牢獄にネズミの巣の穴から小豆や米、ナツメがあるのを見つけ、これらの雑穀を掘り出して煮込み、粥にして空腹を満たしたと言われます。その後、朱元璋が皇帝になると、舊暦12月8日が「臘八節」と正式に定められ、その日に彼が食べた雑穀粥も「臘八粥」と呼ばれるようになったという説があります。
3. 嶽飛軍の戦勝記念
嶽飛が部隊を引き連れ朱仙鎮(河南省開封市)で金軍と対峙している際、厳寒のもとで餓えと寒さに苦しむ兵士たちに、庶民がお粥を送り屆けます。兵士たちははこれで空腹を満たし、勝利を収めます。戦闘に勝利した日が舊暦12月8日であったことから、嶽飛が他界すると人々は毎年この日になると、雑穀や豆、果物でお粥を煮て彼を偲び、それが毎年の慣習になったというのです。
4. 萬裡の長城の工事
秦の始皇帝が萬裡の長城を築こうとしたとき、全國から多くの人が工事に駆り出されます。彼らは一年中故郷に戻ることができなければ、故郷に殘された家族も遠く離れた工事現場に食料を送り屆けることができません。その結果、多くの労働者が餓えに苦しむことになりますが、ある年の舊暦12月8日のこと、少しばかりの五穀を集め、鍋に入れ込んで粥を作り、一人一碗ずつ食した人たちがいました。しかし、最後はやはり彼らも長城の下で命を落とすことになります。そんな過酷な工事のもとで餓死していった労働者たちを悼み、毎年舊暦12月8日が粥を食べる記念日となったとも言われているのです。
5. 後世への戒め
こんな言い伝えがあります。ある老夫婦が艱難辛苦に遭いながらも、勤倹を旨に家を切り盛りしながら、家業を子どもに遺すことができます。しかし、子どもは不甲斐なく、娶った妻もあまり利発ではなく、家業が傾くのに時間はかかりませんでした。
舊暦12月8日、夫婦は餓えと寒さにさらされますが、幸運にも村人が米、麵塊、豆、野菜などを混ぜて作った粥をつくり二人に與えますが、それは「雑穀粥を食べて肝に銘ずる」という暗喩でした。夫婦はそれまでの悪い習慣を改めて、真っ當な暮らしに努め、勤勉忠実に日々を過ごすようになると、生活も上向き始めます。臘八粥を食べるという風俗が民間に流行したのは、こうした伝承を以って世の戒めとするためのものだとも言われています。
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以上、見て來ましたように、臘八節に関する伝承やエピソードにはさまざまなものがありまし。しかし、いずれにせよ長い歴史を背景にしたており、人びとの幸福な生活を願う行事であることに変わりはありません。
★中國では「臘八節」を過ぎると、「♪♪もう幾つ寢るとお正月」モードに突入です。
【參考】
https://www.toutiao.com/a6371924115373523202/
[瀋陽故宮博物院2017-01-05 ]
https://www.toutiao.com/a6919282806078489088/
[萌叔文苑 2021-01-20]
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