〈いるかいるか/いないかいるか/いないいないいるか/いつならいるか/よるならいるか/またきてみるか〉。
谷川俊太郎さんの「いるか」。イルカと「居るか」を掛け合わせた言葉遊びがゆかいで、子どもたちに人気のある詩である。
イルカなら「要るか」の地口にもなるが、そのイルカショー、「要るか」と思ったのかもしれぬが、「要らなかった」のである。二〇二〇年東京五輪・パラリンピックに向けて、最初のテスト大會となるセーリング・ワールドカップ(W杯)江の島大會。開會式でイルカのショーを披露したところ、國際セーリング連盟が「殘念に思う」と非難する聲明を発表した。
知能の高いイルカを見せ物にすることに対して國際社會にはアニマルライツ(動物の権利)の観點などから強い批判があり、ハンガリーやインドなどはイルカショー自體を禁止している。イルカを神聖な存在と考える人々もいると聞く。
イルカのジャンプで開會式を盛り上げる趣向だったのだろうが、それを見て戸惑う選手らがいることは當然考えておくべきだった。風の変化を見るセーリング競技が、世界の「風」を読み違えた。
テスト大會は五輪本番を想定して選手の動きや會場警備、輸送などを確認するそうだが、この件も大切な教訓になる。こちらがよかれと思ったおもてなしでも、「要るか、大丈夫か」と念を入れたい。