むかしむかし、江戸えどの神田に一人ひとりの大工だいくがいました。
【大工とは、主として木造建造物の建築・修理を行う職人のこと。】 女房にょうぼうが死しんで、とてもさびしかった大工だいくは、一匹の三毛みけネコを可愛かわいがっていました。
大工だいくは毎朝まいあさ、ネコのごはんを用意よういしてから仕事しごとに出でかけます。
そして夕方ゆうがたに仕事しごとが終おわると、ネコの大好だいすきな魚さかなをお土産みやげに買かって帰かえります。
ネコも大工だいくの事ことが大好だいすきで、大工だいくの足音あしおとを聞きくと、ちゃんと迎むかえに出でるのでした。
ところがある時とき、この大工だいくは目めの病気びょうきになってしまいました。
そこで、醫者いしゃに診みてもらうと、
「これはひどい眼
病ですな。殘念ざんねんですが、とてもわしらの力ちからでは治なおす事ことは出來できません」
と、言いうのです。
それからはあまり仕事しごとが出來できなくなり、大工だいくはとても貧乏びんぼうになりました。
もちろん、ネコに魚さかなを買かってやる事ことも出來できません。
ある晩ばん、大工だいくはネコに向むかって言いいました。
「なあ、みけや。おれの目めは白しろく濁にごる病気びょうきで、とても治なおりそうもない。仕事しごとが出來できずに暮くらしも悪わるくなり、このままではお前まえを養やしなう事ことも出來できんかもしれん。いったい、どうしたものかのう?」
大工だいくは語かたりかけているうちに、うとうとと、眠ねむってしまいました。
するとネコは、その話はなしがわかったかのように、
「ニャー」
と、小ちいさく鳴なくと、大工だいくにすり寄よって、大工だいくの目めをしきりに舐なめ始はじめたのです。
右みぎの目めを舐なめると、今度こんどは左ひだりの目めを舐なめます。
それに気きづいた大工だいくは、
(変へんな事ことをするわい)
と、思おもいましたが、目めを舐なめられると、とても気持きもちがいいので、ネコの好すきなようにさせていました。
それからというもの、ネコは暇ひまさえあれば、大工だいくの目めを舐なめてくれたのです。
すると不思議ふしぎな事ことに、大工だいくの目めの濁にごりは、だんだんと薄うすれてきました。
そして十日とおかばかりたつと、大工だいくの目めはすっかり治なおって、両目りょうめともとてもよく見みえるようになったのです。
ところがその頃ころからネコの目めが白しろく濁にごっていき、ついにネコの目めは見みえなくなってしまったのです。
でも、心配しんぱいする事ことはありません。
目めの治なおった大工だいくは目めの見みえなくなったネコを今いままで以上いじょうに可愛かわいがり、ネコは何不自由ふじゆうなく幸しあわせに大工だいくと暮くらしたのでした。
おしまい
很久很久以前,在江戶的神田有一個木匠。
木匠的妻子死了,木匠非常寂寞,他就養了一隻花貓,寵愛著它。
木匠每天早上餵過花貓飯後再出去工作。
到傍晚工作完成後,都會買花貓最喜歡的魚回來,作為禮物給它。
花貓也很喜歡木匠,一聽到木匠的腳步聲,就馬上出來迎接他。
但是,有一天,這個木匠得了眼病。
於是,他就去找醫生,讓醫生看了看,醫生說:
「這是非常嚴重的眼病,
遺憾的是,以我的醫術是治不好的。「
之後,木匠就不怎麼出來工作了,生活也變得貧窮了。
當然,也不能買魚給貓了。
一天晚上,木匠對小貓說:
「吶啊,小貓咪,我的眼得病了,變得又白又模糊不清,似乎治不好了。
不能出去工作,生活也過得不好了,這樣下去連你也沒辦法餵養了,
到底該怎麼辦呢?」
說著說著,木匠就迷迷糊糊的睡著了。
於是,花貓像是聽懂了木匠的話似的,
「喵兒喵兒」
小聲的叫了一下,便靠近木匠,開始反覆地舔木匠的眼。
這次舔右邊的眼,下次舔左邊的眼。
木匠注意到後,感覺小貓做的事很奇怪,
但是眼被貓舔了之後,感覺很好,就隨它意讓它舔。
之後,小貓只要有空,就舔木匠的眼。
不可思議的是,木匠模糊不清的眼病,漸漸變輕了。
接著過了10天左右,木匠的眼徹底治好了,兩隻眼能看的非常清晰。
可是,從那時候起貓的眼變得又白又渾濁不清了,最終還是看不見了。
但是這不需要擔心。
治好眼的木匠從此之後更加疼愛眼睛看不見的貓了,
貓沒有什麼不自由的,它幸福的和木匠生活在一起。
結束