1人で住み、1人でご飯を食べ、1人で旅行し、1人で生活する…消費の高度化にともない、単身者・獨居者層に向けた巨大な消費市場が緩やかに形作られている。2枚入りパックのパンはコンビニエンスストアの棚をみるといつも売り切れで、「1人でごはん」のアドバイスはますます多く出回り、200ミリリットル入りの赤ワインの小瓶が人気で、洗濯機や冷蔵庫といった生活家電は「シングル向け」が次々売り出される…こうした消費生活の中の細々した情景は、「おひとり様経済」が誕生し発展しつつある様子を靜かに映し出している。
家族構成をみると、一家全員が共同生活する伝統的家族の消費狀況とは異なり、1人で生活する人は今まさにその消費ニーズが放出されつつある。単身層には、未婚、晩婚、獨身、離婚、死別の人がおり、仕事や子どもの學校の関係で別々に暮らす夫婦がおり、戸籍を移さずに故郷を離れて働く人がおり、家を離れて勉強する學生がおり、また出張の多いビジネスマンなどもいる。この層は年齢、背景、収所得水準はさまざま、心境もいろいろだが、「1人」でいるという點が共通だ。
米コンサルティング會社のボストン・コンサルティング・グループ中華圏の寥天舒社長は取材に答える中で、「獨居者はコンビニや高級小売産業に大きな需要があり、オンラインの需要も上昇している。たとえば小売や飲食などの需要だ。獨居の人口の増加にともない、消費や販売ルートがビジネスチャンスを求めてモデル転換を行うようになる」と述べた。ボストンと阿里研究院が共同で発表した報告書「中國消費新トレンド」は、「企業が単身の顧客層にターゲットを絞って製品とサービスを生み出すことが、今後の営業販売のトレンドになる」と指摘した。
世帯のニーズを単位とする調達モデルが1人を単位とするモデルに転換する中、消費ニーズにはすでに変化が生じている。
天図資本の李康林パートナーは、「製品という側面からみると、消費するかどうかは家庭ベースで決まらなくなり、ファミリーパックやお徳用パックは売れなくなってきた。家庭の消費というものは安くてよい品を、それも十分な量を消費するものだ。一方、個人を中核とした消費では、家にストックは置かず、ストックはいつでも店の棚にあり、必要な時に買いに行けばいいと考える。両者はビジネスの論理がまったく異なる」と指摘した。
日本の評論家・三浦展氏も著作「日本人はこれから何を買うのか?~『超おひとりさま社會』の消費と行動~」の中で、女性がますます男性化し、男性がますます主婦化していると指摘した。調査によると、現代の日本人女性は下著、ファンデーション、ストッキングへの支出がかつての50~70%に減り、服裝はますます実用性や楽さを重んじるようになり、上の世代が女らしい美を追求したのとは大きく異なる。こうした流れの中で、ユニクロや無印良品やGAPといった実用性の高いユニセックスのブランドが伸長した。対照的に、日本のシングル男性は自分で自分の面倒をみなければならないので、暮らしの質をより重視する傾向があり、ベッド、マッサージチェア、コーヒーメーカー、家庭用品、家電に対する要求が相対的に高い。
中國にも似たような変化が生まれている。浙江大學公共管理學院の賀慈浩準教授は、「家庭を背負っていないので、単身層は非単身層よりも貯蓄が明らかに少ない傾向にあり、限界消費性向(MPC)は逆に非単身層よりもかなり高い。単身者は主にホワイトカラーと中産階級層に集中し、こうした人たちは精神面で消費への懸念が少ないだけでなく、物質的に強い消費能力を備えている。雑誌「新週間」が発表した「中國単身者報告」は、北京、上海、広州、深セン、成都などの代表的都市16ヶ所で回収された有効なサンプル1024點を総合的に分析した結果、「よく考えずにぜいたく品を買う」とした単身の消費者が28.6%を佔め、「1週間に1回以上、バーやカラオケなどの娯楽に出かける」が16%、「1ヶ月間の最大の出費は自分の楽しみのためか宴會などのつきあいのためのもの」が31.6%、「將來に備えて貯金したり保険に加入したりしている」が5.4%となった。
こうした現象は海外でより顕著だ。歐州連合(EU)の行った調査によると、イタリアでは2~5人家族の一般世帯の1人あたり1ヶ月の平均食費は187ユーロ(1ユーロは約125.6円)だが、単身者は320ユーロで、71%も上回るという。また英國での研究によると、単身者の年間支出は配偶者がある人より5千ポンド(1ポンドは約144.3円)多いという。
英國に本社を置く獨立系調査會社ミンテルが今年3月に発表した報告書「単身消費者に向けた営業販売――中國2017年」では、単身の消費者の61%が、「最も興味があるのは娯楽」と答え、これには映畫鑑賞やテレビドラマ観賞が含まれる。次に多いのは旅行の56%、スポーツ・トレーニングの48%だった。「同じ興味や趣味をもった人」向けの市場での営業販売活動は、単身者に最も人気があり、単身者の年代別に設計された市場での相互連動の活動は特に人気が高い。どの活動でも、仲間に入り新しい友人と出會うことが、參加の最も強い動機だ。
自如網の熊林最高経営責任者(CEO)は、「1人での生活の背後には多様化した生活スタイルがあり、物質的に極めて豊富であること、社會全體の質が向上していること、インターネットが需要と供給を正確に効率よく結びつけられること、この3つの條件が新しい生活スタイルを支えている」との見方を示した。
ミンテルのライフスタイルに関するシニア研究アナリストの馬子淳氏は比較研究を経て、「シングル層の単身者像は実に豊富で、いくつかのシンボル的なラベルを貼って定義することは難しい。単身者の反対は配偶者あり、または既婚者だが、消費分野の『シングル経済』は內容がより広い」ことがわかったという。中央テレビ市場研究(CTR)の研究チームがまとめた調査データでは、中國のネットユーザーの82.9%が、「1人で消費したことがある(食事、映畫、街をブラブラ、旅行など)」と答え、男女別にみると、男性は女性より割合が高く、年代別にみると、80後(1980年代生まれ)と90後(1990年代生まれ)の割合が高く86.9%と86.6%に達し、これより年長者と若年者の割合は相対的に低い。また學歴が高いほど割合が高くなり、修士以上の人は90%に迫ったという。
日本の経営コンサルタント・大前研一氏は消費市場の新たな金鉱といえる「おひとり様の新経済」を見據え、たとえば小売産業では、一人暮らし世帯が中心の東京では、大型スーパーの売り上げは減少を続けるが、コンビニや生鮮食品を扱う小型食品スーパーは市場の可能性がますます大きくなっているという。実際、一人カラオケ、レストランの一人用席、小型冷蔵庫、豊富な輸入食品を提供する高級小売店、不動産業者が推す精巧な作りの小型住宅や個性的なデザインの住宅など、シングル向けのビジネスチャンスが各産業で花開きつつある。
天貓(Tmall)が昨年11月に発表した報告書のデータでは、過去10年間に消費財、家電、家具・インテリア製品から化粧品、スキンケア製品、日用品など、いずれも1つの塊としての消費規模が小さくなり、機能がより細分化されていることがわかる。同報告書は、「天貓のインターネット店舗で小型電子レンジや小型洗濯機を買う人の増加率が最も大きく、過去1年間はレンジが970%増加、洗濯機が630%増加した。100グラム入りの米、200ミリリットル入りの赤ワインが同類製品の中で人気があり、「一人分」の商品が小売りのパターンとして定著した。つきあいという側面が非常に強い火鍋でさえ、一人で食べるのが流行っており、過去1年間にインスタントミニ火鍋を購入した人は前年比208%増加した。
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