「左耳(TheLeft Ear)」や「何以笙簫黙(Silent Separation)」、「萬物生長(EverSince We Love)」などの青春映畫が上映されているのに続き、女優の王麗坤(ワン・リークン)、俳優の鄭元暢(ジョセフ・チェン)が主演を務める「重生愛人(The Beloved)」、陳妍希(ミシェル・チェン)、鄭愷(Ryan)が主演を務める「年少軽狂」、俳優の張翰(チャン・ハン)、女優の陳喬恩(ジョー・チェン)が主演を務める「至少還有你(I'll never lose you)」、俳優・何炅(ホー・ジョン)の初監督作品「梔子花開」などの青春映畫も続々と封切られることになっている。
現在中國で起こっている青春映畫ブームは、青春映畫の春が訪れたということなのだろうか。それとも、咲いては枯れてしまう花のようなブームにすぎないのだろうか。
中國の青春映畫ブームの火付け役は?
青春映畫の増加の背景には、まず見る人の若年化が挙げられる。多くのインターネットメディアの統計によると、「小時代」シリーズの観客の平均年齢は20.3歳、「致青春」は22.5歳だ。20歳前後の観客が増えるに伴い、映畫のストーリーも、同年代の若者が成長過程で経験したことに合わせた內容となり、「青春」をテーマにした作品が大幅に増加している。
しかし、青春映畫が監督たちに好まれる最大の要因は、そもそも、敷居が低く、製作費が少なくて済み、投資回収率が高いことによる。
違う意見もある。張一白(ジャン・イーバイ)監督は、「我々は歴史的な借金を返しているからだ」と述べ、「中國の若者、特に70年代や80年代生まれの世代は青春映畫の記憶がからっぽだ。この世代の成長過程では、1本の青春映畫の記憶さえないほどだ。2つの世代のほとんどが青春映畫の記憶がない中、數本の映畫でこの歴史的な欠如を満たせるだろうか?數字から見ても、青春映畫は、まだまだ足りていないし、今後も、絶えず現れるだろう」という見方を示した。
イケメン、美人の出演が映畫の売りに
4月17日に公開した「萬物生長」には、人気女優の範氷氷とイケメン俳優の韓庚(ハンギョン)が主演を務めている。この他、黃暁明と楊冪が共演する「何以笙簫黙」、蘇有朋(アレック・スー)の監督デビュー作「左耳(TheLeft Ear)」、陳妍希(ミシェル・チェン)と鄭愷(Ryan)が共演する「年少軽狂」など、いずれも豪華キャストの名前がズラリと並んでいる。
お馴染みの顔が多數
高校時代や大學時代を描く青春映畫は、若い新人が主演を擔當することが一般的だが、今年公開のものには、お馴染みのベテラン俳優、女優の名前が並んでいる。「何以笙簫黙」は黃暁明と楊冪の2大スターを主演に據え、アンジェラベイビーや佟大為(トン・ダーウェイ)、趙薇などが脇を固める。ネット上ではキャストが「豪華過ぎてすごい」と話題になっている。また、「我是女王(TheQueens)」の出演キャストにはソン・ヘギョ、伊能靜(イノウシズカ)、陳喬恩(ジョー・チェン)が名を連ね、國內外の女王たちが異なる魅力を見せてくれる。
人気ネット小説を原作としている
蘇有朋(アレックス・スー)の監督デビュー作「左耳(原題)」は、中國の人気女流作家・饒雪漫の小説の中で最も名作と名高い同名小説を映畫化した作品で、興行収入が5月5日時點で4億元(約77億3200萬円)を超えた。また、「何以笙簫默」は、最も初期にネット上で人気になった戀愛小説で、ショッピングサイト「噹噹網」の「青春文學販売數TOP10」に3年連続入り、10年で完売108回、再印刷52回という、超大ヒットを記録している。そして、映畫化が決まるまでに、「最も映畫化してほしいネット小説ランキング」に、何度もランク入りした。4月17日に公開された「萬物生長」も、馮唐の小説を原作としている。
興行収入が好調する一方、評判が悪い
中國の青春映畫が増加し、さまざまな興行収入記録が叩き出されている一方、その価値観の方向性やストーリーの表現手法などに対する批判も噴出している。あるネットユーザーは、「中國の青春映畫には、いつも中絶ばかり登場する。これは、自分たちの青春ではない。我々の青春はこんなにひどくない」と揶揄(やゆ)する聲が上がっている。つらい青春時代を描く日本の青春映畫や熱血高校生を描く米國の青春映畫など、海外の青春映畫は、はっきとした特徴があるのに対し、中國の青春映畫はリアルさに欠け、現実の青春とは少し違うとの評価を下している。
しかし、人民日報の記者・趙暁藍は、「夢物語だとは思わない。この映畫を見て、愛はやはり美しいと確信した」と感想を述べている。また、映畫「何以笙簫默」の楊文軍監督も、「現在はこのような戀愛が少なくなったため、現実的でないと感じるかもしれない。でも、今の社會ではこのような戀愛ストーリーが特に必要」と語っている。
良い青春映畫とは、恐らく社會映畫だ
毒舌で知られる映畫評論家・楊文山氏は、「青春映畫が氾濫し、玉石混淆の狀態にある。市場の淘汰メカニズムが必要だ」と語った。
かつての中國にも青春映畫はあった。映畫評論家・韓浩月氏は、「例えば、姜文(ジャン・ウェン)監督の『太陽の少年』や王小帥(ワン・シャオシュアイ)監督の『北京の自転車』は、青春の芳醇な香りをうまく表現した作品だった」と語る。「青春映畫は、テンポや雰囲気のほかにも、若者の心理を正確に把握しなければならない。また、その世代の時代背景に対する分析も行う必要がある。良い青春映畫とは、恐らく社會映畫であり、観客にキャラクターがなぜそのような生き方をしているのかを理解させなければならない」と語った。
海外でも青春映畫ブームが起きているものの、中國と違って青春映畫を単なる戀愛映畫にはせず、「青春+○○」というのが流行のスタイルとなっている。例えばハリウッドでは、青春映畫にコメディやファンタジーの要素などを加え、多元化し、若者の心をゲットしている。日本の青春映畫は、さわやかで純粋なストーリーが売りで、登場人物も人間性にあふれる。このタイプの映畫は、日本の青春映畫の主流であり、ヒットしている戀愛ドラマの主流でもある。
▼青春+ファンタジー:「トワイライト」シリーズ、「ハリーポッター」シリーズ
▼青春+ディズニー童話:「スノーホワイト」「シンデレラ」
▼青春+巖井俊二:「リリイ・シュシュのすべて」「Love Letter」「スワロウテイル」「花とアリス」
▼青春+ミュージカル:「ハイスクール・ミュージカル」シリーズ
▼青春+アニメ:「雲のむこう、約束の場所」「時をかける少女」
▼青春+日本式純愛:「ただ、君を愛してる」「僕の初戀をキミに捧ぐ!」「戀空」「僕等がいた」
冷靜かつ公平に論じれば、日本の青春映畫は比較的早い時期から発展し、すでに成熟したモデルを形成している。映畫の原作となる漫畫自體が、もともと數多くの中から選ばれたものだからだ。ベストセラー漫畫の中からさらに選び出された優れた漫畫をもとにした映畫は當然成功しやすい。
それにしても、観客の認知度と価値観に大きな差が存在するので、製作者は、観客と意志の疎通を図る方法を見つけて、自分の作品をいかに観客が必要としているものに合わせるかを知る必要がある。中國映畫家協會の尹鴻・理事は、「現在の中國の青春映畫には、『小時代』シリーズのように、90年代生まれの若者など、低い年齢層を対象にした作品もあれば、『致青春』のように、青春時代の苦い思い出などをテーマにした作品もある。そのため、青春映畫は今後、文化的価値を多様化させながら発展していくだろう」と予想している。
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